アフターコロナ 7つのメガトレンド+1

■新型コロナと大不況でダブルパンチの社会

 先日、厚生労働省の「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」が発表されたので、早速ダウンロードした。
非常事態宣言も解除されて日本は新型コロナ感染も一服感があるが、世界では南米を中心とする新たな感染拡大の波が起こっている。日本にもほぼ確実に第2波、第3波はやってくるだろう。

 ワクチンや治療薬が発見されて、それが世界中へ十分に行き渡るまでの期間をウィズコロナ、その後をアフターコロナもしくはポストコロナというが、現状ではアフターコロナまでは早くて1年、場合によると2年以上かかる可能性があると言われ、当面の間、世界は新型コロナウイルスと折り合いをつけながら同居をしていくしか無い様子である。

 故に感染が防止できないのであれば、少なくとも感染拡大を防ぐ手立てが必要で、こうしたアプリへの登録は我々の義務であろう。個人情報取り扱いへの疑念が払拭されているわけではないが、家族や仲間、そして自分自身を守るためにも、ぜひこのアプリへの登録をお勧めしたい。

 ウィズコロナはいつまで続くのかは分からないが、いつまでも下を向いているわけにはいかないので、生活も社会も経営も少し視線を上げるべきだろう。
新型コロナウイルス感染が拡大し始めた4月頃には、世界全体のGDPは2%台のマイナス成長を予測されていたが、6月発表のIMF、世界銀行、OECDなどの景況予測はさらに悪化して、マイナス5~6%を予測するとの発表があった。これを過去に照合すると、第1次世界大戦、第2次世界大戦、1930年代の世界恐慌(Great Depression)に次ぐ、厳しい状況だといわれている。

 数字で見てみると、実際に各国のPMI(Purchasing Managers’ Index)は以下のような状況である。
●アメリカ……サービス業PMI=改定値26.7、ISM非製造業景況指数=41.8
●中国……サービス業PMI=44.4(財新)、製造業PMI=49.4(同)
●イギリス……サービスPMI=13.4(CPIS)、建設業PMI=8.2
●イタリア……サービス部門PMI=10.8、製造業PMI=31.1
●スペイン……サービス部門PMI=7.1、製造業PMI=30.8
●ドイツ……サービス部門PMI=改定値16.2、製造業PMI=34.5
●フランス……サービス部門PMI=改定値10.2、製造業PMI=31.5
●インド……サービス業PMI=5.4、同製造業PMI=27.4
●韓国……製造業PMI=41.6
●スウェーデン……サービスPMI=39〈Silf/Swedbank)。製造業PMI(同)=36.7
●ユーロ圏……サービス業PMI=11.7、製造業PMI=33.6
●日本……サービス業の事業活動指数(PMI)=21.5、製造業PMI=41.9
(PMIはマークイット調べ)

 PMIとは「景況感指数」のことであり、日本では「購買担当者指数」ともいわれる。
将来的に景気の良し悪しの予測を消費者やセクター従事者などにヒアリングした統計であり、50を切れば景気悪化、50を上回れば景気好調と解釈すればよい。

 上記のPMIは4月の調査データであるので、現在はさらに悪化していると考えて追うべきだろう。

 このように世界は今、厳しい状況にあるが、必ずアフターコロナが到来することを信じて、志のある経営を行うべきだ。

■ものづくり白書2020からの問題提起

 先日、経済産業省から「ものづくり白書2020」が発表されたが、そこには4つの課題提起がなされていた。
1.企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化の必要
2.企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進の必要
3.設計力強化の必要
4.人材強化の必要
の4つである。

 1.のダイナミック・ケーパビリティとは、環境や状況が予測困難なほど激しく変化する中で、企業がその変化に対応するために自己変革していく能力と定義されている。ダーウィンの進化論でいえば「適者生存」という事であり、企業の競争力の差は、危機における対応力で決まるといえる。

 また2.DXの必要性については、前回に書いた通りである。
ウィズコロナを克服し、アフターコロナで成長するためには、これまでのレガシーな業務プロセス、情報システムを刷新し、新しいビジネスモデルを創生しなければならないが、そのためのキーワードがDXであることは間違いない。

 3.については、3DCADやバーチャルエンジニアリングの利用促進に言及している。
製品の品質・コストの 8割は設計段階で決まり、工程が進むに従って、仕様変更の柔軟性は低下する。それゆえ、迅速で柔軟な対応を可能にする企業変革力を強化するためには、設計力を高めることが重要であるが、現場の熟練技能(匠の技)に依存してきた日本の製造業は設計力が後退してしまったとの指摘がある。

 4.は、ものづくりのデジタル化を推進、実践する人材育成の必要性に言及しており、システム思考と数理の能力を特定している。さらに、デジタル化に必要な人材の確保と育成の方策について、労働政策の観点からは、デジタル技術革新に対応できる労働者の確保・育成を行い、付加価値の創出による個々人の労働生産性をより高めることの重要性を説いている。

 しかし上記のような企業変革の必要性は、新型コロナウイルス感染拡大の以前から言われていたことで、今回のコロナ禍は「変革の起点」ではなく、「変革を加速するもの」と考えるべきであろう。技術革新が指数関数的に進む現在では、それに合わせた企業変革力の醸成は、企業経営に必須の条件であったということである。

■アフターコロナの7つメガトレンド+循環型経済の到来

 今回の新型コロナウイルスで、社会や経済、経営などの価値観が大きく変わることは間違いないと思うが、アフターコロナでは、一体どのようなトレンドが起こるのだろう。このメガトレンドを予測し、自社のダイナミック・ケーパビリティによって、ピンチをチャンスに変えることが経営者の使命である。

 私もものづくりやITに限らず、多方面からの情報収集を行ったが、その過程で購入した「アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド」(日経XTECH著)が、大いに参考になった。

 この本ではこれからの経済を「非対面経済」と称し、アフターコロナのメガトレンドを7つ挙げているので、以下に記載してみる。
1.分散型都市
2.ヒューマントレーサビリティ
3.ニューリアリティ
4.職住融合
5.コンタクトレステック
6.デジタルレンディング
7.フルーガルイノベーション

 ここでは個別に触れることはないが、ご興味ある方は本書をご購入されるか、ネットでキーワード検索をしていただきたいと思う。

 これから続くウィズコロナでは、人が自由に往来し接触、対面することを許さなくなり、既存の社会やビジネスの手法や秩序を破壊した。これからはオンラインとオフライン、デジタルとアナログの社会価値は主客逆転し、オンライン+デジタルがニューノーマル(新常態)になるであろう。そして一度進み始めたこの流れは、もう逆転することはなく、世界がビフォーコロナに戻ることはない。

 もう一つ、私なりのキーワードを付加するとすれば「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」を挙げたい。 今回はこの「循環型経済の到来」について書く予定だったのだが、前置きが長くなってしまったことをお詫び申し上げる。次回はアフターコロナで一番重要だと考えている循環型経済について考察する。

2020年6月 抱 厚志