抱 厚志のオススメ本 バックナンバー

字統
【著】白川 静


漢字は世界でも数少ない象形文字の流れを汲む文字であり、その成り立ちにはシンプルで純度の高いメッセージが込められている。 白川静氏は漢字の成り立ちの研究では世界の第1人者であり、私個人が最も尊敬する研究者の一人である。 平素、考えることもなく利用している漢字の成り立ちを知ることは、会話や読書の価値を倍増させてくれるに違いない。


もう一つの『三國志』 ―「演義が語らない異民族との戦い」
【著】坂口 和澄


一般的に「三国志」とは魏・呉・蜀の三つ巴の様に思われているが、実は戦いの大半が隣接する異民族との戦いであったと言う視点から三国志を観ることを提起する一冊。同じ史実を違う観点から俯瞰すれば、新しい歴史観が生まれてくる様に感じさせられる。三国の興廃如何は異民族の手に握られていたと言う新しい三国志も一興である。


ご機嫌な職場
【著】酒井 穣


友人に薦めてもらい読んだ本だったが、期待以上に面白かった。
筆者は「どうせ仕事をするなら、明るい職場がいい。」と言う当たり前のような考え方を真っ向否定、「絶対に明るい職場を作るべき」と言う理論を展開するが、経営者としても、管理職としても、部下としても感じるものがたくさんある一書。読み易いので、まずは軽く読了して、再読をお勧めする。


マンガで入門!会社の数字が面白いほどわかる本
【著】作:森岡 寛 画:渡邊 治四


マンガは殆ど読まないが、ビジュアルで情報が入ってくる手法として注目している。
会社の数字と言えば苦手!と宣言する人にもストーリーとして読んで頂ければ流れが理解できる。まず全体像を把握するには良いだろう。新入社員にも読ませてみたが好評だったので教材としても利用可能。ちなみに画の渡邊治四(漫画家)は友人です。


卑弥呼の正体―虚構の楼閣に立つ「邪馬台」国
【著】山形 明郷


日本古代最大の謎「邪馬台国」の所在地については、九州説と近畿説が有力である。
しかしこれまでの論争は皇国史観上の虚構の上に展開されていると著者は論じる。
膨大な資料を読み解き、「倭」が日本であると言う誰もが常識と思うところに間違いがあり、倭は朝鮮半島にあったと言う論旨である。著者の主張の是非は分からないが、何事に老いても、我々が何ら疑問を持つことがない常識と言うものが、問題解決の潜在的障害になるかもしれないリスクを感じさせられる一書である。


ポーター教授『競争の戦略』入門
【著】グローバルタスクフォース


M.E.ポーターの「競争の戦略」の入門書。原書の「競争の戦略」にトライして、そのまま本棚に原書を眠らせてしまった方も多いのではないだろうか?しかしポーターの経営理論を知りたい人も多いはずだが、本書は原書を読み解く入門書としてお勧めできる一冊である。体系的で分かりやい文章、事例も多いので、仮に原書に手が届かなくても満足できる内容であるが、ビジネスマンであれば、もう一度、原書読了にトライして頂きたい。疑問が解ける喜びを感じることもできる。


中島らもの特選明るい悩み相談室 全巻
【著】中島らも


今でも自分が悩みの矛盾に陥った時にふと手を伸ばす一冊が本書。
ハチャメチャな著者の生き様や回答が、小さな笑いに変わった時に自分の弱さに気付いた事が何度もある。暗い話題に満ちている現在の日本だからこそ、いろんな問題も笑い飛ばしたいものだ。


ファラオ歴代誌
【著】ピーター・クレイトン


中国の歴史が好きなので、それと対比するためにエジプトの歴史の本を 読み始めたのが30年前。
エジプト史関連も本も100冊以上読んだが、 本書が一番読み応えがあった。
エジプト史初心者には向かないが、 歴史好きには重宝する1冊。個人的好みですみません。


「楽毅」全4巻
【著】宮城谷 昌光


生きている中で己の器の小ささに絶望し、心が折れてしまいそうになる時がある。
また経営者として逆境に建たされた時に、自分の不運を呪いそうになる時がある。
そんな時に一条の光を当ててくれたのが本書であった。
以前にも宮城谷氏の本を推薦したが、氏の歴史観、人物考察には深遠さがあり、 生きてゆく正しい姿があるように思う。 楽毅は中国の戦国時代の燕の武将である。
三国志で人気の諸葛孔明が自らの目標とすべき人を「斉の管仲、燕の楽毅」と したように、
日本ではいまひとつ有名ではないが、中国では、偉才の武将として 人気が高い。
自らの生国(中山国)が滅亡しに瀕しても、智謀と志を持って孤独に戦い抜くが、
国は滅亡し、流浪の人生を余儀なくされる。 しかしその忠節と志は、人生を切り拓く出会いを呼び、
戦国時代の大きなうねり へと繋がって行く様は痛快である。
登場人物も多彩であり、一貫した楽毅の志ある生き方に、己の未熟さを痛感させ られる一書である。
逆境に立つ人にぜひ一読して頂きたい。


「こころを動かすマーケティング」コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる
【著】魚谷 雅彦


日本コカ・コーラ会長であり、現在の同社のマーケティングにイノベーションを起こされた魚谷雅彦氏が、マーケターに必要な7つのマインドについて、余 すことなく語りかける好著。
そのマーケターとしての実践の裏側に、氏の人生 観が見え、具体的な事例には迫力がある。
理論と情熱の配合が絶妙な一冊であ る。


そして謎は残った―伝説の登山家マロリー発見記
【著】エリック・R.サイモンスン,ラリー・A.ジョンソン


謎を解明したいのは人類の永遠の欲求である。 世界最高峰エベレストの初登頂に関しても、75年前に山頂近くで消息を絶った マロリーの登頂成否が大きな謎と言われてきたが、これまでには推測以外の 手立てはなかった。この謎を解決すべくあらゆる面からの考察を行い、 実際にエベレストへの探索で75年ぶりにマロリーの遺体を発見した アメリカ登山隊の記録。解明に挑み続ける筆者の取り組みには、 多くの気づきがあるに違いない。


春秋左氏伝
【著】小倉 芳彦


日本の精神文化は中国の影響を強く受けて熟成されて来た事は 周知の事実である。
とすればその中国の精神文化の原典に触れることで、
日本の精神文化の本質を形式知として捉える事ができるのではないか。
春秋左氏伝は 中国の代表的な経書であり、
長い歴史の中でも価値が損なわれる事なく読み続けられている。
源流にこそ新しいものが存在する。環境が変化しても基本は変わらないとすれば、
必ず本書から未来へのヒントが見つかる。


ドラッカー 365の金言
【著】P.F.ドラッカー


起業する前に読み漁ったドラッカー。経営論ではなく、 経営思想や哲学を教えてくれる。
その言葉は深く、読み手の立場や状況の変化で 感じるものが異なる。
その膨大な著書の中から厳選されたセンテンスがカレンダー のように話しかけてくるのが本書である。私自身は経営者としての行動力を見失わ ないために読む習慣をつけているが、
何度読んでも新しい気づきがある。またドラッ カーの入門書としても好著ではないだろうか。


ウォートン流シナリオプランニング
【著】ポール・シューメーカー


東北大震災は「想定外の天災」と「初動遅れの人災」が組み合わさり、
日本にとって過酷とも言うべき大きな被害をもたらした。企業経営においても、
確かなシナリオプランニングで、これから発生するであろうリスクに対応しなければ
大きな損失を生んでしまう。本書では未来シナリオを「なぜ」 「何を」「どのように」 と言う
簡単な手順で解説しており、事例も多く理解しやすい。 この時期に一読して頂きたい一書である。


企業の地震対策Q & A100―この1冊ですべてがわかる
【著】小林 誠

コメント:この度の大震災で企業の地震対策の整備が重要視されている。 企業の継続的経営や雇用を維持することは、企業の大きな社会的責任であるが、 実際は改正消防法に対応するだけのおざなりな対策になりがちである。 いつ発生するか分からない地震に対しては過剰な投資は困難であり、 費用対効果が求められるのも事実である。本書では地震が企業にもたらすリスクと 対策を分類し分かりやすく解説してくれる。この機会に一読を勧めたい。

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
【著】マーカス バッキンガム


組織のリーダーは多能であり、多忙でなければならないと信じてきた。
しかしそう信じ続けることはハードである。
リーダーのあるべき姿に迷った時に出会った一冊が本書である。
「よりよい未来に向けて人々を一致団結させる」。
これがリーダーが行うべきたった一つのことであると言う内容に迷いが 吹っ切れた自分を感じた。
今でも時々読み返すことがある良著をお奨めしたい。


状況に埋め込まれた学習―正統的周辺参加
【著】ジーン レイヴ , エティエンヌ ウェンガー


成長する職場には学びがあり、学びを実践するコミュニティがある。
著者が重要視するのは能動的な「学習」であり、受動的な「教育」とは異なるものであると
明言する根拠が面白い。 「正統的周辺参加」とは聞き慣れない言葉であるが、
本書を読み解いて行く中ですん なりと頭の中に入ってくる。
もう一段の能動的成長を望む職場のリーダーに勧めたい一書である。


「日・英・中国語で学ぶ工場管理」
【著】澤田 善次郎 (監修)


今後の日本の製造業の発展は「海外との共存」が重要である事は誰もが認め ることである。
特に中国は「世界の市場」であり、「世界の工場」である。
グローバルなものづくりを目指す日本企業がまず直面する問題は「言葉の問 題」であり、
それを解決することは工場の海外展開の第1歩であろう。
国内でもできる海外進出の準備として本書の一読をお勧めしたい。


取締役会の改革―効果的なボードをつくるには
【著】デーヴィッド A.ナドラー


企業における未来の方向性を決め、コンプライアンスを遵守するなど、取締役会が持つ責任は重い。
しかしどれくらいの企業が本当に有効な取締役会を開けているだろうか?
取締役会のあり方に一石を投じる事は、会社の改革の第1歩であり、
ぜひ御社のボードメンバーに一読して頂きたい一書である。


(図解でわかる生産の実務) 工場のメンタルヘルス
【著】鈴木 丈織


現代社会での大きな問題の1つに心の病がある。
社会や価値観の多様化の中で 生きて行く事自体が難しくなっており、
生産現場でも心の不調を訴える人は増えている。 これを放置すると生産性や収益の低下、
労働災害などを招いてしまう。 本書では工場の心理ケアにスポットを当て、
豊富な事例でノウハウを伝えている。


スマート・ファクトリー ― 戦略的「工場マネジメント」の処方箋
【著】清 威人


これまでのERPを水平的な業務統合だとすると、本書で唱えられているスマートファクトリーは、
ERP・MES・FAを垂直的に統合するコンセプトである。
CO2削減と品質向上、キャッシュフロー改善が同時に求められる製造業において、
処方箋の選択肢になりうる工場管理手法であり 技術を生かすマネジメント手法としては大きな可能性を感じさせられた好著。 製造業に限らずITベンダーにも一読頂きたい。


ビジョナリー・カンパニー-時代を超える生存の原則-
【著】ジェームズ・C. コリンズ, ジェリー・I. ポラス


企業経営とは利益創出であり、その株主への還元であると信じていた自分の窮屈さが
嫌気が差しかけていた頃に出会った一冊。
本書では「企業の生きがい」である「理念」重要性を繰り返し述べている。
理念こそが企業の成長エンジンであり、進歩への意欲である。 自社のレゾンデートルに疑問持った時に、新しい価値観の扉を開いてくれた本書は まさに時代を超える生存の原理を教えてくれる。


板書の極意―ファシリテーション・グラフィックで楽しくなる会議
【著】八木 健夫


良い会議を行えば、組織の生産性も上がる。 会議の運営について書かれた本は多いが、
本書は「板書」(ファシリテーション・グラフィックス)にフォーカスした構成になっている。
板書が上手くなれば、議事内容を正しく伝えて、スピーディに共有が図れる事は間違いない。
また良い板書からは、優れたアイデアも生まれ易い。
普段あまり気にならない板書から、会議の改革を起こしてみてはいかがだろうか。


夢をかなえる勉強法
【著】伊藤 真


自分を成長させるためによく資格取得に挑戦する。
仕事をしながら受験するために大切な事は「時間の創出」と「モチベーションの維持」だと思う。
時間は精緻な計画で捻出できるが、モチベーションを維持するためには刺激が必要である。
そんな時にいつも読むのが本書である。社会人が学び続ける必要性を喚起してくれるので一書だ。


ディズニー7つの法則―奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念
【著】トム コネラン


IT業界は大きな変革期を迎えている。単にソフトウェアを提供すれば良いのではなく、
真のソリューションを提供できるIT企業のみ打ち克てるサバイバルである。
顧客の課題や現状を的確に分析し、決して現状に屈することのない「提案」を行いソリューションを実現するサービスを提供しなければならない。
これまでのIT産業は「ソフトウェアの製造業」的な色合いが強かったが、
今後のIT産業は「ソフトウェアをツールとして駆使し、
真の経営課題を解決するサービス業」としての要求を満たさなければならない。
これはまさに「ソフトウェア・サービス業」であると言える。
だとすれば「最高のサービス業」「最高の顧客満足」とは何だろう?
それを解決してくれるヒントを探すために本書を読んでみた。
本書を通じて知りえた事は顧客を感動させる「奇跡」の重要性であり、
それはビジネスの原点であると言う事である。
ビジネスとは人と人、企業と企業の接点に生まれるわけだが、
そこへ常に感動を生じさせる事が最高のアプローチであると本書は説いている。
顧客満足に徹底する姿勢には感動すら覚える。
経営者、現社会人に限らず、これから就職する学生の方にも読んで頂きたい一書である。
仕事の中に常に感動があれば、更に大きく自己成長を遂げる事ができるのではないだろうか?


ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
【著】ダニエル・ピンク


15年以上、会社経営をしてきたが、その中でいくつかの転換点があった。
その自分の経営や仕事、家庭などの人生のあり方を見直したい時、ある方に勧めて頂いたのが本書である。今後はは機械化、低賃金により、これまで知的労働とされてきた業務がアウトソーシングされるようになり所謂『右脳主導』型の産業が高い地位を占めるようになるという論旨。
それには6つの感性(センス)が必要であると説く。
・「機能」(実用性)だけでなく「デザイン」(有意性)
・「議論」よりは「物語」
・バラバラの断片をつなぎあわせる「調和」
・「論理」ではなく「共感」
・「まじめ」だけでなく「遊び心」
・「モノ」よりも「生きがい」
自分自身の「当たり前」に変化をもたらせるヒントを与えてくれた一冊である。


社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
【著】イヴォン シュイナード


著者は全米でも「最も入社したい企業」の常連であるパタゴニアの創業者であり本書ではその企業理念や歴史について語っている。この会社では就業時間内に、いつサーフィンやサイクリング、
スキーなどへ出かけても構わない。今で言う「ジョブシェアリング」や「フレックスタイム」を成功させている企業であるが、一見「自由放任」に見える企業経営の中には「社員の自律性」「責任感」「会社との信頼関係」「社員間の協調性」などがその根幹となっていることが繰り返し述べられている。
自由であるという事は、そうであるための責任を果たさなければならないということだろうがパタゴニアではそれが理想的な形に近いと言えるだろう。パタゴニアの登場によって、
人間中心の企業経営も「唱える理念」ではなく、「実践する理念」に変わりつつある。
また著者は企業の一番大切な目的は「地球を守ることだ」と述べていることにも注目したい。
日本のこれからの経営者には新しい経営の形として、ぜひ一読して頂きたい一冊である。


V字回復の経営―2年で会社を変えられますか
【著】三枝 匡


経営再建屋と言われる著者が、自ら携わったV字回復の経験を小説仕立てにまとめた1冊。
具体的な事例は、一貫した理論に基づいて展開されて行く。
企業再建のフレームワークを理解するにも十分。 実際に著者の三枝氏の話を聞いた事があるが、
著書以上に熱かった記憶がある。企業再生の本質を突く一冊である。