経営の舵取りが難しい局面であることは間違いがない


2011年の景気動向を考察する

新年明けましておめでとうございます。本ブログをご愛読頂き、ありがとうございます。
昨年はたくさんの方から暖かいメッセージを頂き、重ねて御礼申し上げます。
本年も独自の視点から、ものづくり経営について考察を重ねて参りたいと思いますので、
倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

リーマンショックで大きな打撃を受けた世界経済もアジア諸国の力強い成長の継続によって、
当初考えていたよりも短期間で回復基調が顕著である。
後述するが日本経済も2010年年初の予測よりも高いGDPの回復を見せ、
2011年はこのリーマンショックの出口戦略として、今後の企業成長曲線を描く大きな転換点になる1年と考えて良いだろう。
しかし回復基調は顕著ながら、足下の日本経済の状況は楽観的な訳ではなく、
今後の不透明さもあり、経営の舵取りが難しい局面であることは間違いがない。
年末には経済産業省や民間シンクタンクの2011年予測に目を通したが、
どのレポートにも状況の厳しさが訴えられている。
わが国景気予測を要約すると次の通りである。

「夏ごろから弱含みであり、鉱工業生産の減少が明確化する。
主因は買い替え補助終了による自動車販売の大幅減少であり、
加えて、これまで景気を牽引してきた輸出も頭打ちと考えられる。
一方、内需は本格回復に至らず、「底ばい」状態が持続し、内需が脆弱ななか、
耐久消費財と輸出の牽引力が低下したことが、景気弱含みの原因となるであろう」。

まずGDP成長率については以下の図を参照願いたい。

2010年7-9月期のGDP2次速報は、設備投資、民間在庫の上方修正などから、
実質GDP成長率が1次速報の前期比0.9%(年率3.9%)から前期比1.1%(年率4.5%)へと上方修正された。これはエコポイント、エコカー減税、煙草の大幅値上げ、
猛暑などの政策的もしくは一時的要因が重なった事が理由であるので、
本格的な経済回復と見るのは時期尚早であろう。
2010年10-12月期は輸出の低迷が続く中、
駆け込み需要の反動により個人消費が大きく落ち込むため、
5四半期ぶりのマイナス成長がほぼ確実である。
足もとの景気は足踏み状態にあるが、海外経済の回復や円高の是正に伴い輸出の伸びが高まること、反動減の影響一巡により個人消費が持ち直すことから、
2011年1-3月期はプラス成長に復帰し、景気後退局面入りは回避されるだろう。

直近の実質GDPはピーク時(2008年1-3月期)に比べると3%以上低い水準にある。
実質GDPが元の水準に戻るのは2012年度末となるだろう。(ニッセイ基礎研究所)
四半期単位でのGDP成長率予測は以下の通りである。

今後を展望すると、以下の三つが景気下振れ要因として作用すると思われる。
(1)輸出
欧米向け輸出は、これまで堅調を維持してきたものの、今後は公共、
民需部門ともに景気牽引力の低下が懸念されるため、弱含みに転じると思われる。
また増勢が鈍化している新興国向けは、景気対策の政策効果の剥落、
電子製品などでの生産調整継続などの要因で、
当面、急速な回復は期待できない状況と言えるだろう。

(2)円高
円高がわが国経済に及ぼす影響は、
(1)価格を通じた影響、(2)数量を通じた影響、(3)企業行動に与える影響
の3ルートと考えるのが通常である。

イ)価格を通じた影響は、為替差損による輸出企業の売上減少と、
為替差益による輸入企業のコスト減少となる。マクロ的には為替差益が為替差損を上回るため、
ネットでのプラス影響が予測され、10%の円高ドル安で、年間約1兆円のプラス効果が出る。

ロ)数量を通じた影響は、わが国製品の価格競争力の低下を通じ、輸出数量を押し下げ、
輸入数量を押し上げであり、現在の為替ベースを維持できたとしても、
2011年度の実質GDPが0.2%押し下げられることは避けられない。
韓国・台湾企業との競合激化などを考慮すれば、実質的なマイナス影響拡大は不可避であろう。

ハ)企業行動に与える影響は、コスト削減の強化であり、中長期的には、
製造業の海外生産シフトが加速することが予測され、
国内の設備投資や雇用の減少要因になるであろう。
マクロで俯瞰すると、短期的なプラス効果よりも、中長期的なマイナス効果の方が大きいため、
円高はわが国経済にマイナスの影響を与える。

(3)政策効果
2011年はテレビ販売に反動減が生じ、
地デジ切り替え前までに約2.5年分に相当するテレビ需要が先食いされる
今後の反動減が予想される。そのため、地デジ切り替え後の影響は深刻で、
かつ低迷は長期化すると思われる。
一方、昨年9月以降に打ち出された経済対策による景気押し上げ効果は限定的と言わざるを得ないので、消費の伸びは鈍化する(下図参照)。

いずれにしても不透明感の強い状況が継続する事は間違いがない。
日本国内での内需拡大の速度の鈍化が予測される中では、
海外経済との同調を前提としたグローバル戦略は不可避であり、
それは国内製造業の規模に関らず、ずべての製造業に求められる事になるだろう。
現状を可視化し、中期経営計画を立案し、
組織の再編成を行う事はどの企業においても必需である。
この時期にこそ経営者としてのリーダーシップの発揮が求められる。