経営の要素とは「人・もの・金・技術・情報」
起業家の本質について考察する(1)全国的に入梅し、雨の日が続く、鬱陶しい毎日である。
6月は季節外れの台風などもあり、水害の被害が続出したが、
これも地球規模の異常気象の現れであろうか。
海外でも中国やロシア南部の水害で
大きな被害が出ていると言う記事が目に留まった。
南米のマヤ暦は2012年で終わり、
それが人類滅亡を表すなどと一部で実しやかに言われているのが、
少し気になる程の天変地異が続く数年である。
しかし繰り返される天災から立ち上がる人類を見るにつけ、
その力強さを再認識したりもする。
希望を捨てない限り、何度でも立ち上がることはできるものだと信じたい。
今年も6月20日(水)~22日の3日間、
東京ビッグサイトで「設計・製造ソリューション展」が開催された。
開催前日に季節外れの台風襲来で、来場客減少が危惧されたが、
最終的には84,509名(出展は過去最高の1633社)が来場され、
大盛況のうちに終了した。
弊社も日本システムウェア株式会社様(http://www.nsw.co.jp/)と
共同でブースを出展したが、
出展中には多数の弊社ユーザ様や新規のお客様にご来場頂いた。
ご来場頂いた皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げたい。
今年はCADの展示ブースに大掛かりな出展が多く、
派手なパフォーマンスでの集客が印象に残った。
製造業はまさにものづくり上流の設計からのイノベーションを
考えているのかも知れない。
また例年に比べて、具体的な生産管理システム導入計画を持った
お客様の来場が多く、この展示会を通じてたくさんの引き合いを頂いた結果、
弊社の支店・営業所も展示会のフォローで大忙しの状態である。
出展側も震災後の本格的な情報化投資再開への
手応えを感じた3日間であったと言える。
こんな時こそ、細心かつ大胆に、お客様の成長戦略としての
生産管理システム提案を行いたいものだ。
さて今回のテーマは「起業家の本質を考察する」である。
唐突だが、マーク・ベニオフ氏をご存知だろうか?
オンデマンド・ビジネス・アプリケーションを提供する
セールスフォースドットコムの創業者。
15歳でエンタテインメントソフトウェア会社リバティー・ソフトウェアを設立。
南カリフォルニア大学卒業後、アップル、
オラクルなどでプログラマとして長期間活躍したのち、
2000年にセールスフォースドットコムを創業。
「ソフトウェアの終焉」を提唱し、
ビジネスアプリケーションをインターネット上で利用できるサービスを
世界に広めた米国の起業家である。
そのマーク・ベニオフが東日本大震災後の日本に
「今こそ起業家の重要性を認識すべき」と言う提言を行っている。
内容は以下のようなものだ。
『既存のやり方に疑問を投げ掛け、新しいアイデアを提案し、
新たな産業を作っていける若い起業家が必要だ。
日本の大企業や投資家らは、起業家の重要性を認識すべきで、
彼らに投資し、彼らの商品を世界の市場に売り込む手助けをすべきだと思う。
起業家の貢献が評価され始めれば、
日本に成長と活力を生む新たな領域が見えてくると、私は信じている。』
また駐日米国大使のジョン・ルース(John V. ROOS)氏は
「3・11後の復興の鍵を握るイノベーションと起業家精神」と題して
以下のような主旨の寄稿を行っている。
『東日本大震災が発生した今年3月以降、
日本国民はこの歴史的大災害から立ち上がる力と決意を見せてきた。
国や地方自治体、非政府組織、民間部門の素晴らしい活動で、
被災者の生活は大きく改善した。今は経済再生の兆しも見えるが、
東北地方、さらには日本全体に未来の繁栄を約束するような形での再生を促すには、
やるべき仕事がまだ多く残っている。
これまで何度も述べたように、私は日本が今回の危機から立ち上がり、
以前より強くなると確信しており、
それを確実に実行する1つの手段が東北と日本全国でのイノベーションと
起業の促進であると考える。
運命の3月11日以前も日本の景気回復は遅れていたが、
震災は既存の問題を悪化させ、新たな課題も生み出した。
しかし震災の前後で核心的な問題――いかにして持続可能な成長と
包括的繁栄を確保するか――は変わっていない。
過去に困難に直面した時、日本と米国はいずれも、
市場に技術をもたらす新たな企業の設立を奨励することで
経済を再活性化させてきた。
そのうち何社かは全く新しい産業部門を主導する企業に成長している。
私はこれまで仕事をする中で、雇用の創出と社会資本の拡大という点で
新興企業にいかに大きな可能性があるかをこの目で見てきた。
私はこのような起業を通じたイノベーションが、
将来の成長と繁栄の鍵になると考える。
日本各地を訪問した際、私が多くの方から受けた質問は、
起業を促すために日本は何をすべきかというものだった。』
これからの経済はグローバル化必須であり、
二人のような海外から見た日本経済復興の視点は重要視したい。
この二人の意見の中で共通の視点は「今後の日本経済復興の鍵を握るのは
『起業家もしくは起業家精神の重要性』である」と言えるだろう。
既存の経済の枠組みだけでは、日本の復興や更なる成長は困難であり、
日本には本当の意味での「革新を推し進める起業家」の登場を国内外から求められていると言う意味ではないだろうか。
筆者はNPO法人「同志社大学産官学連携支援ネットワーク」の理事を
拝命しているが、その活動の一環で、4月26日に中之島中央公会堂おいて
「起業家の本質」と言うテーマの講演をさせて頂いた。
自分自身も起業家の端くれであるので、後進に出藍の誉れを期待しつつ、
またこれまでの自分の経営の履歴を振り返り、
いま一度、己の原点回帰を行うために、
力不足ながら講演をお引き受けした。
お蔭様で講演は好評のうちに終了したが、後日何人かの方から、
講演内容についてのご質問とご意見も頂き、それにお答えするためにも、
どこかで自分なりの起業の本質を文書まとめたいと考えていたのだが、
貧乏暇なし、時間に追われる毎日の中で、その機会を作ることができずにいた。
前述の二人の考えを知るに至って、
自分なりの起業家の本質を本コラムにまとめることにした。
まだまだ浅学の謗りを免れることができないほどの稚拙な内容ではあるが、
数回に分けて論じさせて頂きたいのでお付き合い願いたい。
既存の事業、特に歴史の長い事業領域では、
往々にして既得権益や既成概念が横行し、
震災を契機にさらに変化しなければならない環境に対して、
保守的な事情が優先されることが多く、
最終的には政治力や不当な価格競争に巻き込まれ、
誰もハッピーにならないレッドオーシャンでの競争を作り出してしまう。
震災後の日本復興において、起業家が重視されるべきだと言う
ベニオフ氏やルース氏の考えは、ある意味、
既成概念や既得権益などが存在しない新しい市場や
ビジネスモデルの創造を行い、グローバルでのブルーオーシャン戦略を
展開できる企業登場の必要性を指しているのではないだろうか。
まさに時代は新しいスタイルの起業家登場を待ちわびている。
最初に日本の起業家を取り巻く環境の整理を行ってみる。
「知っていそうで知らないのが日本の企業数ではないだろうか?」
「一体何社の会社が日本に登記され、増えているのか、減っているのか?」
即答できる人は案外少ないのでないか。
上記のグラフは日本における会社登記数の推移である。
平成7年をピークに会社の数は大幅な減少傾向にあるのが分かる。
会社が減少すれば、雇用は減少し、
法人税や所得税などの税収が減少することは明らかであり、
大局的に見ると、日本経済の縮小傾向が顕著であると言えるだろう。
また下図をご覧頂きたい。
国際的に見ても、日本における起業家の割合は非常に低い。
隣国の韓国に比しても半分以下であり、データには記載されていないが、
中国などと比べてもかなりの低水準である。
こうした面でも日本はグローバル化のチャンスを十分に活かしきれていない。
特にリーマンショック以降の日本では起業数が激減である。
理由はいくつか考えられるが
(1)世界的不況や震災などを経て、大企業への就職などの安定志向が増加していること。
(2)日本の法人税が高すぎること。(相続税も高い)
(3)会社の借入金を経営者が個人的に保証しなければならないこと。
(4)コンプライアンス重視、労働者保護などの観点から経営の自由度が低下したこと。
(5)円高傾向が顕著であり、景気の先行きが不透明なこと。
(6)期待された政権交代のメリットが発揮されていないこと。
(7)VC、銀行など金融機関がベンチャー投資(融資)で短期の成果を求めること。
(8)日本における起業は基本的にワンチャンスであるので慎重にならざるを得ないこと。
などが該当するのではないか。
また起業前と起業後の経営課題の変化(下図)を見れば、
起業前(左グラフ)は資金の問題が一番大きいが、
起業後(右グラフ)は人材確保や育成などの問題が露呈し、
S字カーブの底を抜け、収益モデルを確率する前に、
資金が逼迫してしまうのだろう。
経営の要素とは「人・もの・金・技術・情報」であるが、
これを包括的に支援する社会的な仕組みが無く、
日本における起業はまさに「経営者の個人の資質と資本」に依存した
構造を脱却できない。
起業しても10年後に黒字の会社は1.7%だそうだ。
大半の起業は良いアイデアを持っていても、
金と人の問題でアイデアの実現に至らず、
休眠、解散、清算してしまうのが現状であり、
日本には応用技術は育っても、基礎技術が育たないと言われる原因も
このあたりにあるのではないだろうか。
次回は自分の起業の経緯から感じるものを考察してみたい。
(追記)
本ブログの内容である「起業家の本質」について、
8月25日(土)に大阪の「ITいいともトーキング」と言う企画で
話をさせて頂く事になったので取り急ぎご案内まで。
【Facebook】
http://www.facebook.com/#!/events/371372112928920/
【志士奮迅:お知らせページ】
http://www.xeex.co.jp/shishifunjin/info/
ご興味ある方はご来場下さい。