聞き上手は話し上手


先日、FM京都(α-STATION)へラジオの収録へ行った。
【Let’s KYO Together ~今日からはじめる、京からはじまる~】と言う番組で、私が理事を務めるNPO法人「同志社大学産官学連携支援ネットワーク」の活動のアピールを行ってきた。
当NPOは大学や企業の関係者などが、それぞれの個性を理解し、利害を超えて連携し、新たな産官学連携のモデルを作ることによって、地域や経済の活性化に貢献することを目的として設立されたNPO法人である。

同志社大学を起点として、産官学連携活動を行う事で、地域経済の活性化やベンチャー企業の創出及び支援のための活動を行っていて、産学交流会や異業種交流会の開催、企業の経営者などからの相談に応じたり、具体的なベンチャー企業支援、事業承継のアドバイス、社会起業家育成などの活動を行っている。

当日の収録では、NPOが主催する「未来経営塾」と「社会起業家養成塾」のイベント告知を中心に約20分ほど、DJの川原ちかよさんに引っ張って頂く流れで話を勧めたのだが、久しぶりのラジオ、気持ちよく話ができた。

今回も最初に台本を頂いた時は、「この内容でどうやって15分以上話すんだろうか?」「時間が余れば、音楽でも流すのかな?」と思っていたが、やはりプロのDJの川原さん、台本をアレンジしながら、あっと言う間に20分近く、しっかりと話を引き出して頂けた。

川原さんの問い掛けが、絶妙のタイミングで繰り出されるので、こちらも伝えたいことを漏れなく話すことができる。これは川原さんがリスナーの視点に立って、自分も「産官学連携支援」と言う、あまり聞きなれないテーマを知ってみようと思って頂いたからだと思う。
まさに「聞き上手は話し上手」と言う事だろう。

振り返れば、自分自身も営業でお客様に立つことが多いが、「話し上手は聞き上手」が実践できているのか不安になる事がある。
前職の三菱では、先輩に「こちらのペースで聞きたいことを、お客様に進んで話していただくのが営業の達人」と教えて頂いた。しかしまだまだ自分は営業の達人の域には達しない。

人間はたくさん話す(聞いてもらう)ことで安心感を持つものだ。聞けば聞くほど、お客様との関係は緊密なものとなり、商談の安定感は増すものだと言えるだろう。
しかしそれは逆もまた真なりで、営業(自分自身)もたくさん話した(聞いて頂いた)方が商談に対する満足感を得ることができる様に感じてしまう。

営業の基本は「説く」ことにあるが、相手の事情を考えずに自社製品やサービスの話をするのは「説明」であり、また自分が年配やスペシャリスト的な立場にある場合には、お客様の話に耳を傾けず、お客様に「説教」をしてしまう事もある。

しかし営業の基本は「説得」であり、お客様の視線で考えて、その得(メリット)を説くことにある。それはお客様の視線で聞くこと、すなわち営業として「聞き上手」でなければならないと言う事だ。

30年近く営業をやっているので、当然、こうした営業の基本も身についていなければならないのだが、どうしても話したい気持ちが前に出て、お客様を聞き手にしてしまう自分を猛省してしまう時がある。

もちろんお客様の話を聞くだけでは不十分で、話を伺いながら、お客様に気付きを提供し、最終的にはお客様に進んで合意形成をして頂くのがベストである。そのためには、こちら側にもシナリオと良質な「問い」が必要である。

良質な問いは、お客様に良質な気付きを提供することができ、お客様は自らが気付くことによって、現状の課題抽出や問題解決へのモチベーションを高めて行くことができる。

昨今では「ソリューションビジネス」とよく言われるが、問題解決の鍵とは「お客様」にあるものだ。決してお仕着せのコンサルティングではなく、お客様の視線で考え、お客様に回答を見出して頂き、それに対する具体的な解決策はともに検討して行く。
ある意味、最高のコーチング、もしくはファシリテーションにこそ、真のソリューションビジネスの原点があるのではなかろうか。

成長とは変化であり、変化とは行動、行動とは勇気、勇気を発揮するには志を持つことである。

商談のプロセスにおいても、最終的にはお客様の「志」の所在を見抜き、その重要性を共有し、行動を起こす勇気を喚起することが、もっとも効果の期待できるプロジェクト運営になるように思う。

そのためにも、営業や技術者は最高の「聞き手」であり、助演男優賞や助演女優賞を狙うべきであり、主演はあくまでもお客様であること再認識したい。

簡単な事ほど実行や継続が難しいものだ。
今回のラジオの収録では、聞き手であることの重要性を再認識させて頂いたように思う。
気付きがあれば、即実行だ。

分かっているのにやらないのは、己に対する怠惰である。
怠惰とは時間の浪費である。
時間の浪費は希望の喪失だ。
希望とは未来が今よりも良くなると信じることであり、良くなる努力を行うと言う志を持つことではなかろうか。


人と出会うことは楽しい。出会った人と「最高の聞き手」「最高の話し手」を交互に繰り返すことができれば、自分の人生を豊かにする希望を持つことができるように思う。

以上

ご参考までに

  1. (1)NPO法人同志社大学産官学連携支援ネットワーク

http://www.doshisha-net.org/

  1. (2)社会起業家養成塾(第6期塾生募集中【5月20日締切】)

http://www.doshisha-net.org/doc/skyj/

  1. (3)第26回未来経営塾(5月26日 同志社大学にて開催)

【若手起業家から見た起業の本質~その決断と行動~】
http://www.doshisha-net.org/doc/news/2014.5.26