見える化の枠組みについての「3つの切り口」


見える化について考える Part2

前回は見える化の変遷やフレームワークについて説明した。
最近、よく取り沙汰される「見える化」についても、出所や経緯があることはご理解i頂けたものと思う。
今回は「見える化」に対して、もう少し踏み込んだ視点で話を進めて行きたい。

まず、見える化の枠組みについての「3つの切り口」について解説する。
筆者の考える3つの切り口は以下の通りである。
1.誰に対して「見える化」するか
2.何を「見える化」するか
3.どのようなステップで「見える化」するか

1.誰に対して「見える化」するか
見える化は「誰が」見るのか、特に組織における役割の違いから大きく異なってくる。
職位・職責によって見るべき視点が違うと言う事である。
経営層はマクロな戦術をマネージャー層は具体的な戦術を、
そして現場はオペレーションを「見える化」する必要がある。

(1)経営トップ
企業経営全体を多面的な視点から俯瞰し、見えるようにし、
マクロな観点からの経営課題の発見が重要である。
社内の事はもちろんであるが、自社の業界におけるポジションなどの社外的な見え方も重要である。

(2)マネージャー
経営トップの戦略を受けて、具体的な戦術に落とし込むためには、組織のミッションを明確にし、
そのミッションに応じて、発生しうる問題の早期発見ができるような見える化が重要である。
問題が見えた後には具体的な戦術の見える化が必要となる。

(3)現場担当者
企業の戦略や戦術を受けて、具体的な行動に落とし込むのが現場の役割であり、
見える化すべきものも、より具体的なものが求められる。
与えられた条件で業務を遂行するだけでなく、自律的に問題を発見し、
解決の為のPDCAを回して行くことが重要である。
この三者の視点全体を俯瞰する「見える化の見える化」の重要性も考慮しておきたい。

2.何を「見える化」するか(「見える化」する対象)
「見える化」と言っても、目的も定かでないまま、徒に何でも数値化すればよいと言う訳ではなく、
何を「見える化」するのかという具体的な定義が必要である。
経営や改善に寄与するものは全て「見える化」できれば良いのであろうが、
やはりある程度の範疇を定義しておきたい。
よく「見える化」で言われる対象には以下のものがある。

(1)成果の見える化
企業活動としての成果の「見える化」である。売上高、収益、在庫、原価などの財務系指標以外に、
社風、ブランド、技術力、社員の能力の発揮状況などの無形資産の可視化が重要である。
企業価値はこの無形資産に含まれる事が多く、大半は暗黙知として共有されているものが多いが、
可視的に把握されていないものが多い。また競合情報などの社外の状況の可視化も必要である。

(2)業務プロセスの見える化
研究開発、調達、生産、営業・流通、アフターサービス、企画、経理・財務、
人事・労務などの一連のバリューチェーンを「見える化」する。
個々の定義はもちろんであるが、相互の関連付けについても明確にする。

(3)経営資源見える化
企業が保有する経営資源である「人・もの・金・技術・情報」などについて見える化を行う。
金額換算できる有形資産はもちろんであるが、今後は情報、
技術などの無形資産の「見える化」が重要である。
貸借対照表には記載されない無形資産で企業競合力が決まる場合が多いことに留意しなければならない。

(4)顧客の見える化
企業の大きな資産のひとつが顧客であることは間違いがなく、
顧客に対して適切な製品やサービスを提供できない限り企業の成長はありえない。
ここでは顧客の「属性」「志向」及び「満足度」などの「見える化」を行う。
適切な製品戦略を立案するためには、顧客の見える化は必須と考えるべきである。
上記のように内外に対してバランス良く「見える化」を行う事が重要であるが、
製品やサービスの形態によって、その重要度のバランスや項目自体は変わってくる。
経営戦略を立案するに当って、何を「見える化」するのかを明確にしておかなければならない。

3.どのようなステップで「見える化」するか
誰に・何を「見える化」するのかを決めれば、
最後に見える化の成果抽出に至るプロセスを設計しなければならない。
下記の例のなかでは特に★印のついているものは必須であると考えたい。
(1)現状を見えるようにする ★
(2)現状から問題を抽出する
(3)現状に対して解決策を検討し目標を設定する
(4)目標を見えるようにする(共有できるようにする) ★
(5)目標と現状のギャップ(もしくは異常)を見えるようにする ★
(6)目標までの具体的なアクションを設定する(実現への道筋の見える化) ★
(7)目標に向けての行動を起こす
(8)行動の過程で目標に向けた到達状況を見えるようにする(評価する) ★

上記のプロセスにおいて重要な事は「現状」「標準」「理想」のレベルを明確にすることである。
「現状」と「標準」の差分を「異常」(遭遇する問題)とし、「現状」と「理想」の差分を「課題」
(作り出す問題)として認識・共有することが重要である。

これまでの3つの切り口をフレームワークとして図示すると以下のようになる。

見える化については上記の3つのワークシート埋める事を前提としながら進めてゆくと、
理解が容易である。
次回は「見える化」のより実践的な取り組みに付き解説したい。

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