製造業における「人材の採用」
(大橋高広氏寄稿-最終・6回目-)

 こんにちは。株式会社NCコンサルティングの大橋高広と申します。
「管理職研修・人事制度設計」の専門家として活動しております。

 さて、最終回となる今回は「人材の採用」についてお話しします。
 労働人口減の現代日本にあって、採用は経営者や人事担当者が頭を悩ませている重要な経営課題といえます。優秀な人材を採用することは企業の成長に直結するため、どの企業も採用を重要視しています。しかし実際には、採用活動が上手くいかず行き詰まっているという企業が多いのではないでしょうか。

 有効求人倍率は、平成後期の1.5倍を超える高水準からは落ち着いたものの、コロナ禍の今でも1.27倍(令和4年6月)という高い数値で推移しています。さらに労働人口はこれから減少していく一方なので、「求職者が企業を選ぶ時代」といえます。製造業のように長期的な経営計画を進める企業にとって採用力の強化は急務です。そこで今回は、人材採用におけるポイントについてお話ししていきたいと思います。

1.「猫の手でも借りたい」という採用になっていませんか?
 中小中堅製造業でよく見かけるのが、「欠員補充」のための採用です。こういった場合の求人票には、「未経験者OK」と書いて幅広く募集したり、具体的な人物像を書いていなかったりすることが多いように感じます。このような場当たり的な採用は踏み止まってください。なぜなら、採用したい人物像が明確でない状態で募集をしても、本当に欲しい人材が応募してくるケースは少ないからです。それどころか、猫の手も借りたいという状況を脱した時に扱いづらい社員と化してしまい、そうなったら後の祭りです。だからこそ、業務に追われて忙しい欠員補充の採用の時こそ、慎重に採用しなければならないのです。例えば、「どんな能力が必要か」「業務経験の有無や程度」「入社後に期待する役割」などについて考えてみましょう。これらを洗い出した上で求人票を作成し、未来につながる採用をしていきましょう。「優秀な人材」という視点も大切ですが、「採用しても良いと考える最低限のライン」を決めておくのも重要です。

2.求人媒体をきちんと選定していますか?
 とりあえず人材会社に営業されるがまま、求人広告を出している企業があります。しかし、これも見直す必要があります。なぜなら、媒体選定こそ経営者や人事担当者の仕事だからです。例えば、工場の若手社員が欲しい場合は、大手の求人広告に頼るよりも、地元の工業高校を訪問して先生と信頼関係を構築する方が効果的かもしれません。また、開発の優秀な人材を採用するには求人広告よりもヘッドハンティングが向いているかもしれません。このように、欲しい人材の行動特性に合った媒体を選択することが、自社に合う人材確保への近道となります。

3.自社の魅力をきちんと発信できていますか?
 求人広告でよく見る「アットホームな職場です」といったアピールポイントの記載。しかし、残念ながら求職者が見ても魅力的には映りません。下手をすると、「アピールすべきポイントがないから、アットホームといってごまかしているのでは?」と感じられてしまうこともあります。採用において、自社の魅力を明確に伝えられないのは致命的です。そんなことをいうと、「大企業じゃないので、うちにはそんな目立った特長はないよ」とおっしゃる企業がありますが、企業には必ずその企業にしかない魅力や強みがあります。まずは、自社の魅力を把握するところから始めてみましょう。そして、求職者が魅力に感じるポイントをしっかりアピールしましょう。ポイントは「具体的に」「数字を使って」「従業員の声を入れる」です。例えば「福利厚生の中身を列挙するだけ」よりも、「◯◯%の従業員が××という福利厚生制度を活用していて、その結果、とても働きやすくなったと好評です」の方が具体的で説得力が増します。

4.オリジナルの求人サイトはありますか?
 昔は自社のホームページに「採用情報」といったページを設けて、求人票を掲載している企業が多くありました。しかし、残念ながら現在ではあまり効果はないといえます。なぜなら、ホームページは集客や製品説明用に構成されていることがほとんどで、求職者向きの内容になっていないからです。だからこそ、会社ホームページとは別に、求人用のホームページをつくる必要があります。コンテンツとしては、「社長メッセージ」「会社の特長」「仕事内容・具体的な1日の仕事の流れ」「社員インタビュー」などです。欲しい人材が応募したくなる内容を意識してください。
 また、最近の若手はホームページよりもSNSを見る頻度が圧倒的に高いと思います。そのため、求人用のSNS(特にTwitterとInstagram)を運用し、そのSNSアカウントと制作した求人用のホームページを連携すると効果的です。

 いかがでしたでしょうか?
 今や採用はどの企業にとっても、非常に重要な経営課題となっています。しかし、ほとんどの企業がその場しのぎの対応となっています。だからこそ、計画的に採用を実施している企業の採用力はどんどん向上していきます。

 また、今はSNSで情報を得る時代です。大手企業はSNSには強くないので、中小中堅企業にこそチャンスがあります。今回の記事を参考に、ぜひ前向きに採用戦略に取り組んでいただけましたら幸いです。

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 この度は計6回にわたる連載記事をご覧いただきまして誠にありがとうございました。
また皆さまとお会いできるのを楽しみにしております。

(文責:大橋高広)

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