製造業における「管理職の育て方」
(大橋高広氏寄稿-3回目-)

こんにちは。株式会社NCコンサルティングの大橋高広と申します。
「管理職研修・若手社員研修・人事制度設計」の専門家として活動する傍ら、ビジネス書作家としても活動しております。

 さて、3回目となる今回は「管理職育成」についてお話しします。製造業の現場において管理職が担う役割は大きく、管理職が適切に役割を果たすことでマネジメントが機能し、現場の生産性や成果は飛躍的に向上します。

 しかし、実際には管理職がうまく機能していないと頭を抱える経営陣や人事担当の方は多いのではないでしょうか。なぜ組織におけるマネジメントが機能していないことが多いのでしょうか?それは「管理職にマネジメントスキルがないから」です。
そもそも日本の職場の管理職のほとんどは、現場で高い実績をあげた社員や作業のスキルが高い社員(勤続年数が長い、年齢が高いだけということも)が抜擢され、役職に就いています。そして、多くの場合、役職就任後に適切な管理職教育を受けることはありません。

 日本の職場の管理職には、実はポテンシャルがあるにもかかわらず、その実力を十分に発揮できないでいる人が多くいます。それもそのはず。一般スタッフが機械を扱うときに外部や社内の研修を受けたり、上司や先輩からOJTを受けたりしてスキルアップしていくのに対し、管理職は研修を十分に受けることはなく、ましてOJTはほとんど受けることがありません。これでは管理職がスキルアップせず、マネジメントが機能しないのも当然です。現場の鍵を握る管理職をしっかり育成することで、職場の問題解決に繋げることができるのです。

 特に、今まで管理職教育に注力してこなかった会社にお勧めすることは、「管理職の基礎教育の実施」です。1回や2回程度、外部の研修に参加したり、管理職が自ら本を読むなど管理職自身の自発性に委ねたりするのではなく、研修等を通じて、管理職としての心構えや管理職の役割・コミュニケーションの取り方などを「継続学習」してもらうのです。しかし、働き方改革の時代にそんな時間を取るのは難しい、もしくは今すぐ成果が出るような方法でないと困ると考えておられる会社も多いことと思います。

 そこで、特に管理職に実施すべき教育を3つお伝えします。

 1つ目は「業務を具体的に指示するスキル」です。
私は顧客先に訪問して、上司の指示がうまく部下に伝わっていないということをよく感じます。業務内容を正確に伝えていないとは別に、「業務の目的」「ゴールのイメージ」を伝えておらず、業務の重要度や優先度を上司と部下で共有できていないことが多いのです。
たとえば、「会議室を清掃しておいて」と
「会社の命運を握るお客様が来社されるので、会議室をチリ1つ落ちていない、机には指紋1つ付いていない状態に清掃しておいて」では、
会議室を清掃することは変わりませんが、部下への伝わり方は違うことがお分かりいただけると思います。部下への指示は、お互いの認識を共有できるレベルで伝える必要があります。

 2つ目は「部下との面談スキル」です。
目標達成や生産性向上、職場の問題解決のために、管理職に部下との面談を指示している会社は多いと思います。しかし、その多くは、面談をしたという事実をつくり、会社への報告書を作成して提出するための儀式と化しています。現場ではマンネリ化した内容の薄い面談が繰り返されていることが多いのです。
部下との面談で意識して欲しいのは、チャンクダウンです。チャンクダウンとは、部下の成長に向けて上司が面談で部下の課題の掘り下げていくことをいいますが、これができない上司が多いのです。「分からないことがあったら、いつでも聞いてきなさい」と言われても、「分からないことが分からない」のが部下です。人はなかなか自分で自分のことには気付けないものです。だからこそ、上司が部下の課題を一緒に発見してあげる必要があるのです。

 3つ目は「部下への伴走型フォローアップスキル」です。
私は研修講師をさせていただく機会が多いのですが、最近は集団研修の限界を感じることも多くなっています。現代の日本の職場には、多様な考え方やスキルを持ったスタッフがいます。これらを一律に育てて、一律な成果を出すことは極めて難しいと考えます。だからこそ、集団研修と並行して、個別のスタッフへフォローアップしていく必要があります。またフォローアップも従来のトップダウン式の指導では、もはや部下は動かない時代です。「給料を貰っているのだから嫌でも黙ってやりなさい」というような論理はもはや通用しません。これからの上司は、部下に寄り添い伴走型でアドバイスすることが求められます。

 いかがだったでしょうか。
今回の記事で試してみようと思う内容が一つでもございましたら幸いです。

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 それでは、また次回の記事にてお会いできるのを楽しみにしております。

(文責:大橋高広)