製造業における「若手社員の育て方」
(大橋高広氏寄稿-4回目-)

 こんにちは。株式会社NCコンサルティングの大橋高広と申します。
「管理職研修・若手社員研修・人事制度設計」の専門家として活動する傍ら、ビジネス書作家としても活動しております。

 さて、第4回目となる今回は「若手社員の育成」についてお話しします。製造業の現場において若手社員の育成は喫緊の課題となっています。日本の製造業では、30代や40代の中堅社員が不在となっていたり、働き方改革により育成の時間がとれずにいたり、若手社員の育成が後手に回っていることが多いようですが、このような状況を打開したいと考えている企業は多いと思います。

 私はこれまでに1200名以上のクライアント様のスタッフと面談してまいりましたが、最近の若手社員の傾向として、次のようなことが挙げられます。

①仕事に対する熱量が低い
仕事でも勉強でもスポーツでも、成果を出すためには泥臭いことや苦しいことを乗り越える必要があります。しかし、そういったことを嫌がる若手社員は非常に多いと感じます。また、大変な苦労をしてまで大きな昇給は望まない、職場で肉体的・精神的に苦労している上司を見て、自分は出世したいとは思わないという若手社員も非常に多くなっています。

②想像力が弱い
最近の若手社員は休み方改革に熱心な方が多いのですが、早く帰ったり休んだりすることに主眼を置いていると、仕事に関する経験が少なく、「引き出し」が少ないままとなっています。若いうちに多くの経験を積んでおかないと自分で考えることができず、指示待ちになったり、状況を判断して先手で行動できなくなったりします。

③権利意識が強い
最近はインターネットの普及などにより、労働関連法に詳しい人が増えてきました。そのようなこともあり、仕事で成果を出すことは疎かなのに労働者としての権利にはうるさく、会社や上司も指導に困っているケースが多くあります。まだ仕事が終わっていないのに、時間になったら帰ってしまう人もいるという声もよく聞きます。

 このようなことから現代の職場では、若手社員の育成はきわめて困難なものとなっていると感じている方は多いようです。そこで、古くから教育のシーンで語られている山本五十六の名言を紹介させていただきます。

 やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。(A)
 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。(B)
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。(C)

1.ティーチング(指導)
(A)の部分はティーチングのやり方を解説しています。ティーチングとは、上司の持つ知識やスキルを部下に教えることをいいます。ティーチングは、まだ知識やスキルがない新入社員や業界未経験者への教育に役立ちます。ただし、上司がティーチングばかりしていると、部下は自分で考えることができず、自主性や自発性が損なわれてしまう可能性があります。また、現代の職場では、育成にも効率が求められるため、「目で見て盗め」ではなく、業務遂行に関する知識とスキルを具体的に教えて、習得できるように努めてください。

2.コーチング(支援)
(B)の部分はコーチングのやり方を解説しています。コーチングは、上司が一方的に教えるのではなく、部下の自主性を尊重し、上司は部下自身の「気づき」による成長をサポートします。教育指導ではなく、自主的行動の支援がメインとなるため、短期的な成果を求めるのが難しく、そもそも、ある程度の知識やスキルがないと、部下は「正しい気づき」に辿り着けないというデメリットもあります。そのため、コーチングを実施するのは、部下がある程度の業務に関する知識やスキルの習得していることが前提となります。また、上司の面談スキルも重要です。昨今、1on1を取り入れる企業は増えていますが、会社から面談をするように言われた上司が実施している面談は、「最近どう?」と聞くことを繰り返し、マンネリ化していることがほとんどです。上司は、「部下の気づきを引き出す力」が求められます。

3.エンパワーメント(権限移譲)
(C)の部分はエンパワーメントのやり方を解説しています。エンパワーメントとは、上司が部下を信頼して、部下に権限を移譲することをいいます。私がこれまでいくつもの企業のスタッフの皆さまと面談し、感じていることの一つに、「仕事ができる上司は部下に仕事を任せて見守ることが不得意」というものがあります。これは、自分でやった方が正確で早いなどの理由があると考えられますが、これはティーチングやコーチングを実施し、部下を育てていないから、部下を信頼できないのではないでしょうか。また、部下の日頃の努力に感謝を示していない上司も多いと思われます。山本五十六の言葉に従い、ぜひ部下に感謝の気持ちを伝えるようにしてみてください。

 いかがだったでしょうか。
現代の若手社員の特徴を踏まえて、育成方法を検討し実施してみてください。今回の記事が皆さまの職場改善の参考になりましたら幸いです。

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 それでは、また次回の記事にてお会いできるのを楽しみにしております。

(文責:大橋高広)