こんにちは。オフィス有馬諄代表の有馬諄と申します。国内外の企業の経営コンサルタント、経営顧問として活動をしております。
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夢工学は「夢」を持つことができた人、既に「夢」を持っている人が、もし「夢」を実現させ、成功させたいと望むなら、どうすればよいかを説いたものです。私は経営コンサルタントや経営顧問として、企業様のご支援をさせていただく際に、夢工学の継承者としてその「在り方」と「やり方」を適用して、大きな効果とたくさんの感謝を経営者様からいただいています。なお、このブログ内容は本年2月から隔月で掲載をしてます。
第3回目となる今回は「夢工学」のロゴス論(技術論)についてお話しします。
夢工学は情緒的な方法論ではありません。夢工学は「パトス論(理念論)」と「ロゴス論」で構成されています。「仏作って魂入れず」のように苦労して成し遂げながら肝心な点が欠けないように、「仏(ロゴス論)作って魂(パトス論)を入れる」、言い換えれば、理性と感性を同時・同質に発揮することを求める工学です。
パトス論は、1+1=∞という「感性」の非合理性、感覚性、感情性などの働きをいかに最大化するかを説くものですが、ロゴス論は、1+1=2という「理性」の合理性、納得性などの働きをいかに最大化するかを説くもので、プロジェクトマネジメント(以下、PM)の基盤上に構築されます。PMが対象としない夢を起点とする「上流工程」=Vision&Planning Management(以下、VPM)と、PMが完了して事業基盤完成後の事業運営を成功させる「下流工程」=Operation Management(以下、OM)をカバーしています。みなさまもよくご存知の「論理」「論法」「論理学」「議論の道筋」などを表す「ロジック」は、ギリシア語の「ロゴス」に由来します。夢工学におけるロゴス論は、【夢がある人に、夢をいかに実現させ、実現した夢をいかに成功させるか】の技術論です。
●経営の本質
経営学者ピーター・ドラッカー氏は、本業(経営)とは「既存事業」と「新規事業」を共に成功させること、そして日々の事業運営・管理は経営ではないと指摘しました。既存事業は創業者によって実現し、後継者の成功によって発展します。これが「第1の創業」です。新規事業は既存事業に於ける第2、第3の創業によって実現をします。もしくは新たな事業創業者によって実現をします。以上のことを総括すれば、「経営の本質」とは次の4点に集約されます。
- 社会に役立つ「新しい価値」の創造とその提供
※新しい価値とは、新しい商品、新しい製品、新しいサービス、新しいシステム、新しい事業を指します - 新しい価値の創造による「新しい顧客」の創造
- 新しい顧客の創造による「新しい収益(売上、利益、現金)」の創造
- 上記3つの価値創造による持続的な事業の「創業」
夢工学では、いかなる業種・業態であっても夢を起点とするプロジェクトサイクル「VPM~PM~OM」の一貫した創造によって、「創業」を実現します。VPM、PM、OMの3つのマネジメントを「三位一体」として、相互にFeed ForwardとFeedbackさせながら駆使する技術です。また、夢と現実を繋ぐ虹の架け橋であるOperation(運営)、Stage(運営舞台)、Structure(事業基盤)(以下、OSS)を駆使する技術でもあります。
ロゴス論は、夢実現のために何を創造するか、それを実現させるOSSをいかに適時、適切に設計・計画(=VPM)するか、OSSをいかに建設するか、完成したOSSをいかに運営(=OM)するかの技術です。OSSの完成は夢の実現を、OSSによる運営成功は夢の成功をそれぞれ意味します。従ってOSSの良否が夢=事業の実現と成功を左右する重要な基本条件となるのです。PMとOMはみなさまもよくご存知のことと思いますから、今回はVPM=仮説設定計画を中心にお話します。
VPM(Vision & Planning Management)=仮説設定計画
VPMとは、夢が実現した状況と夢が成功した状況を共に仮説を立てる計画です。現状から計画を立てるのではなく、仮説から現状に向けて計画することが重要です。夢が実現・成功した状況を具体的に仮説を立て、その仮説を実現するための仮説建設計画(設計)を描きます。その両方の仮説を実現する手段を現状に求めて仮説実現を計画するのです。
VPMの「Vision」とは、会社や個人本人が実現したい夢を「絵(イメージ)」に描いたものを指します。「Planning」とは、特定された夢が実現して成功している状況を描く(仮説)ことを指します。VPMは夢から始まり、以下3つの計画を経て、最終段階の「計画設計」に基づいて当該事業プロジェクトを実現させ、成功させるための経営トップによる意思決定が行われます。
認識計画
これは会社、組織、自分などの「夢」を実現させる内容に名前を付ける計画です。言い換えれば、夢をプロジェクトとして認識する計画でもあります。認識計画は以下のステップで行います。
- 実現させたい夢を曖昧でもよいので、その中身を具体的に描く
- 実現させる範囲(スコープ)と方法(マナー)を曖昧でもよいので
決める - その中身を基にプロジェクト化して「○○プロジェクト」と仮に命名する。この命名がプロジェクト認識と夢実現に向けた挑戦の「旗印」と
なる - 夢実現を目指すプロジェクト・チームを編成し、リーダー(プロジェクト・マネージャー)を選ぶ
- 仮の名前でプロジェクトを理性的(クール)に、同時に感性的(ホット)に推進することをメンバー間で誓う
●夢の中身
実現したい夢の中身は暖昧模糊なものが多いのが現実です。そのため多くの人は「夢」を夢のままにしてしまいます。そして夢はいつの間にか消えて行きます。私が夢工学の実地指導の現場でいつも感じることは、「自分の夢はハッキリ分かっている」と断言する人に限って、夢を正確かつ具体的に認識していない場合が多いのです。
●ネーミングがすべて
いかに優れた商品であろうと、それに見合った優れたネーミングがなければ人はそれを購入しないと言われます。優れたネーミングは「主張したい」「実現させたい」ことを後押しします。個人や企業のレベルを超え、世界に訴えるためにネーミングを考えることは重要です。夢の実現と成功を目指す時、アイデアの初期段階ではその中身やプロジェクト化しようとする内容は極めて曖昧なものです。そのため中身や内容についてのネーミングは暫くなされません。プロジェクト仲間の間でも「あれ」「それ」「これ」などの指示代名詞が飛び交います。
時間が経つと日常の忙しさのため、その中身や内容を忘れ、積極的に進める情熱を失ってしまいます。第2回で触れた夢工学の「エントロピー論」の通り、熱は温度の高い物から低い物に流れて元には戻りません。せっかく思い付いた夢の実現への挑戦を時間経過による忘却と情熱消失で破壊してはならないのです。この問題を防ぐ方法が「ネーミング」なのです。曖昧な中身と内容に、直ちに、いい加減でよいので仮の名前を付与しましょう。仮の名前はその後の検討の過程で何度でも変えればよいのです。その度に洗練された名前になっていきます。と同時に、夢実現プロジェクトの内容が洗練されていくのです。
仮の名前があることによって頭脳の中に「思考の結晶の素」が生まれ、意識的、無意識的に「夢プロジェクト」に関する有形無形の情報が結集してくるという絶大なる効果もあるのです。命名こそプロジェク実現への第1歩です。
着想計画
着想計画では以下の3点が重要になります。
- 夢が実現し、適時、適切に運営され、成功している状況を頭の中で具体的に描くことです。技術的、経済的に実現するかどうかを問いてはいけません
- 描かれたイメージをハードウェアかソフトウェアなどに変えて定着させます。「想」いを「定着」させることから着想計画と呼称しています
- その仮説を実現させるためのアイデアを考え、記録し、整理します
●想
「想」とは、頭の中に存在する夢、希望、期待、願望、志、目的、目標、好きなことなどのイメージを言います。またそれらを実現させるアイデア、ヒント、閃きなどは、この段階では想と潭然一体となっています。そのため前者と後者の区別がつきにくいのですが、この区別がつけば後者が「創」と認識されることになります。
●創造
創造の「創」はアイデア、ヒント、閃きなどに相当します。それを活用し、「汗と涙」を流す行動によって夢が実現します。この行動が創造の「造」に相当します。「創」と「造」は、車の両輪の様に互いに駆動し合って初めて創造が実現するのです。創造力は天才や特別な才能を持つ人だけの特権ではありません。ごく普通の人にも本来備わっているものです。トーマス・エジソンが残した名言の通りなのです…「創造活動には1%のインスピレーション(閃き=創)と99%のパースピレーション(発汗=造)が必要である」。
●着想計画の事業失敗抑止力
新技術、新製品、新商品、新サービス、新事業を開発しようとする日本の多くの起業家や大企業の開発責任者は、徹底した頭脳内投影、頭脳外投影、シナリオ化という一連の作業を十分に行っていないと感じます。この一連の作業をしっかり完成できれば、夢実現の可能性を飛躍的に高めます。着想計画を検討することで最初漠然と認識していた「夢」が明確に把握される様になります。また夢実現の方向が明確になります。更には、夢実現への情熱、意志、意欲、挑戦心などが醸成されて強化されるのです。
●既成概念や固定概念などの打破
夢の具現化・固定化は、夢を起点とした演緯的思考です。これは既成概念や固定概念などを打破することに極めて役立ちます。着想計画を練ることは新しいアイデアを生み易くするメリットがあります。夢工学は、「夢」が実現された状況を最初から描くことを要求します。この状況とは、創造された後のモノ(コトガラ)を描くことを意味します。そして創造される前のモノ(コトガラ)である現状との問に、両者を繋ぐコンセプト(等価)を積極的かつ強制的に創り出すことを要求します。これは一般的に「仮説検証」と言われる作業でもあります。しかしその様な静的な検証ではなく、動的な「仮説強制活動」を夢工学は要求します。「現状を改善、改良して未来を創り出す」のではなく、「未来を創り出すために現状を革新、改革、革命する」思考です。
●好きなことの発見と確認
普通の「夢」は寝ながら見るものです。夢工学の「夢」は目覚めていて見るもの。目覚めて夢を具体的に描く方法は後述の通り極めて簡単な方法を提示しています。しかし描くこと自体はなかなか大変で何度も何度も訓練しないと描き切れません。描き切った時の効果は抜群です。自分やグループの夢の本当の姿が分かります。その結果、夢実現への凄い力を結集させることが可能となるのです。なぜなら夢それ自体が「やりたいこと」「好きなこと」「楽しいこと」などを意味するからです。「やりたくないこと」「嫌なこと」「楽しくないこと」などを毎日無理矢理に取り組んで会社に勤め続ける…これでは経営への提案や問題解決への取り組みなど何も建設的な成果は出てきません。営利企業の目標は収益獲得ですが、日々の仕事は経営者や社員が楽しく意欲を持って取り組まれなければ成果など出ません。「夢がある仕事」とは「やりたいこと」「好きなこと」「楽しいこと」です。従って会社で最も重要なことは、上は社長から下は一般社員まで「夢のある仕事」に取り組んでいることです。
●着想計画での「想」の描き方
これは「夢あるマイ・ホーム」を実現させることを例にすると分かり易いです。まず自分にとって「夢の家」とは何か、どの様な働き(機能)を持った家を作るか、どの様なリビング、キッチン、寝室、仕事部屋、庭、ガレージを作るのか、入居後の生活をどの様にするかなどを考えると思います。そして真剣かつ楽しく「家の間取り」を描きます。また自分が好むイメージの家を探して住宅展示場などを見学したり、専門情報をネットや住宅雑誌などで調べたりします。そして描かれた間取りの新宅で新しい生活をエンジョイしている自分の状況を想像します。
●頭脳内投影
夢を抽象的な言葉やイメージだけで捉えるのでなく、夢が実現した時の状況(シーン)を徹底的に具体的に頭の中に描くことを「頭脳内投影」と言います。まさに夢の定義です。自分の頭の中の「夢」の頭脳内投影は、何百、何千と描くことができます。また何百、何千の数の連想イメージも思い浮かぶはずです。この作業は「量が質を左右する」作業です。
●頭脳外投影
描かれた頭脳内投影イメージを徹底的に外部に映し出すことを「頭脳外投影」と言います。この作業は、頭脳内投影イメージを字、数字、絵などでポンチ絵にしたり、そのイメージに似た写真や絵を集めたり、イメージを表現できる模型を作ることです。「徹底的」とは、何百、何千の頭脳外投影イメージを描くことを言います。この投影は、3次元空間系と時間系で認識することが重要です。頭の中にある夢が実現した状況を自分だけでなく人に分かるように空間的な絵にすること。一枚に書けなければ何枚にも書く。
●シナリオ作成
夢を外部に投影した絵、文章、数字、記号などを基にシナリオ(スト一リー)を作ります。そのために時間系の観点からの認識が必要です。簡単に言えば紙芝居や絵コンテのようなものを作ることです。細部まで書くことが求められ、その数の多さが着想計画の質を決め、夢実現の可能性を高めます。新しい商品開発や新しい事業開発に従事している人は、こんな面倒なことをしても意味がないと思うかもしれません。数多くの夢のコンテンツだけを認識すれば、真に望む夢が何であるかが分かるでしょうか?NOです。そのためシナリオを作り、シナリオの場面の内容を因果関係、相関関係、相反関係などの観点から分析する必要があります。もし感性と理性を発揮すればシナリオ全体から真に望む夢が何かが分ってきます。頭脳内投影、頭脳外投影、シナリオ化を何度も何度も繰り返して作り直す、その過程で夢の本質が見えてきます。
構想課題計画
構想課題計画は、着想計画を実現させるために解決すべき課題または阻害する問題を明確にすることを言います。
- 着想計画として空間系と時間系に従って作成された夢実現時の状況を掴むために、どの様な問題があるかを具体的に洗い出すこと、そしてリスト化すること
- 洗い出した問題を着想計画のシナリオに従って再編集すること
- 再編集と並行して問題を因果関係,相関関係、相反関係で組織立て(Formulation)すること
●問題の本質
国、企業、個人などの問題を羅列するだけでは「問題の本質」を認識出来ません。それらの問題を形態的、現象的、類型的に分類しても意味がないです。問題の本質を見抜くためには相当の努力と経験を必要としますが、以下のことに挑戦してください。
- 問題を因果関係、相関関係、矛盾関係に置換すること
- 1を構造化(三次元的表現=空間軸配置)すること。そしてシナリオ化スケジュール表現=時間軸配置すること
●構想計画の作成方法
構想計画として問題を洗い出す手順は、着想計画での夢の定義の手順とほぼ同じです。違う点は、前者がアイデアやイメージを扱う、後者が問題を扱うことです。具体的手順は自分流、プロジェクトチーム流で構いません。マニュアル化されたものを使うより、自由に問題を思い浮かべることに効果があります。頭脳内投影、頭脳外投影も着想計画での手順に同じです。
●シナリオ化
「頭脳外投影」された問題を時間軸に従って並び替えるシナリオ化が必要になります。シナリオ化には外部調査・外部情報の入手が必要です。外部情報の入手にはデジタル情報だけでなく、人と会い、人の肌感覚などのアナログ的情報が特に重要です。この作業過程で問題の本質を把握します。問題の本質を掴む姿勢でないと外部情報の入手は単なる情報収集作業に過ぎません。問題やニーズをしっかり把握しないと、夢工学をいかに精練に駆使してもユニークなアイデアや閃きは生まれません。
計画設計
「計画設計」は構想課題計画で明らかになった「問題」を全く新しい観点から総力(人、モノ、カネ、時間、情報、知恵などを総合的に投下すること)をあげて解決する「設計作業」もしくは「問題解決作業」です。また当該事業を実現すべきか否かの最終的意思決定に資する情報を提供する作業でもあります。検討内容の質、検討の数、検討のマナー(ストーリーボード作成、模型化、シミュレーション実験)、検討のスコープ(範囲)など、いずれにおいても「基本計画」と比較にならない極めて高いレベルの設計を目指します。プロジェクトの意思決定後の「基本設計」とほぼ同じレベルのものです。
●予定は未定で確定ではない
多くの人は「予定は未定で確定でない」と考えます。予定とは「未来予測計画」です。未来とは「未知で未確定なもの」です。従って「計画の立案に多くの人、金、時間などを投下する必要はない」、「計画は所詮、絵に描いた餅だ。誰でも何とでも描ける」、「事業採算性の計画をいくら詳細に詰めても所詮エンピツを舐める作業だ」などと計画を軽視する経営者が多いと感じます。もし未来予測の計画を軽視したら、最初から未来計画である夢の実現を諦め、放棄したと同じ結果になります。未来は未知で未定で未確定なのです。だからこそ、従来の考えを変え、全く新しい観点から未来を敢えて予測し、未知を既知化し、現実を変えれば、企業と自分の「夢」を実現させることが可能となるのです。この計画設計こそがプロジェクトの成功の鍵を握ります。
●計画設計の検討範囲
計画設計は以下の設計を行います。1~2までが逆流思考、3~4までが順流思考です。
- 夢を実現させ、成功させるための適時、適切な運営を設計する
- 設計された運営を適時、適切に行えるOSSを設計する
- 設計されたOSS を適時、適切に建設する方法を設計する
- このOSSで適時、適切な運営を可能とするかを検討する。だめならOSSを再設計する
- この運営で夢が成功するかどうかを検討する。だめなら運営を再検討する
以上の設計で求める機能を充足させられない場合は、何度も繰り返しフィードフォワード(順流思考)とフィードバック(逆流思考)を行って計画設計を完成させます。
いかがだったでしょうか。ご興味をお持ちいただける内容がございましたら、ぜひ私のホームページの「お問い合わせフォーム」からお気軽にご連絡くださいませ。いま私は夢工学発案者の川勝先生と共同経営顧問も行っています。川勝先生にも話を聞いてほしい、相談をしたいというご希望があれば、ぜひお問い合わせください。現在川勝先生と私で無料Zoom経営相談を実施しています。
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次回最終回は「夢工学意思決定論」「PM論」「OM論」、そして「悪夢工学」も少しご紹介をさせていただきます。それでは、また次回の連載記事にてお会いできるのを楽しみにしております。
〔文責:有馬諄〕