こんにちは。オフィス有馬諄代表の有馬諄と申します。国内外の企業の経営コンサルタント、経営顧問として活動をしております。
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夢工学は「夢」を持つことができた人、既に「夢」を持っている人が、もし「夢」を実現させ、成功させたいと望むなら、どうすればよいかを説いたものです。私は経営コンサルタントや経営顧問として企業さまのご支援をさせていただく際に、夢工学の継承者としてその「在り方」と「やり方」を適用して、大きな効果とたくさんの感謝を経営者さまからいただいています。なお、このブログ内容は株式会社エクス様のご厚意で、本年2月から隔月でエクス様のブログページでも掲載をいただいています。
最終回となる今回は、「夢工学」のロゴス論(技術論)の意思決定論を中心にお話しします。
前回は、ロゴス論で重要な位置付けとなるVPM(Vision & Planning Management)=仮説設定計画のお話をしました。VPMとは、夢が実現した状況と夢が成功した状況を共に仮説する計画です。現状から計画を立てるのではなく、仮説から現状に向けて計画することが重要です。夢が実現・成功した状況を具体的に仮説して、その仮説を実現するための仮説建設計画(設計)を描きます。その両方の仮説を実現する手段を現状に求めて仮説実現を計画するのです。
計画設計が完成すると、いよいよそれを基に当該プロジェクトを実現させるか否かの最終的な「意思決定」を行う段階に入ります。意思決定はプロジェクトの全プロセスで最も重要なマイルストーンであることは、みなさまもご承知の通りです。夢工学は、パトス論とロゴス論のそれぞれの観点から構築された意思決定論で構築されています。世の中には数え切れないほどの意思決定論が存在しますが、複雑で不明確な意思決定基準は実用性と迅速性に耐えられません。その点で夢工学的意思決定論は、一言で言えば下記の通り極めて単純です。
最高意思決定者は、計画設計の結論がパトス論とロゴス論の要求する意思決定基準に従って意思決定をする。合致すればYES、合致しなければNOの意思決定をするのです。
パトス論に基づく意思決定論
世に存在する数多くの意思決定論は「技術論」に依存し過ぎていると感じます。それらの中には人間行動特性や心理特性を基とした意思決定論も存在します。夢工学のパトス論に基づく意思決定論は、心理学的意思決定論に近い位置付けですが、パトス論は「夢を実現させ夢を成功させるための精神構造の在り方」を説いているため同じではありません。パトス論は人間の感性に訴えることを課題としています。従ってパトス論が求めることを満たさない事業を実現させることは極めて困難です。仮に実現してもその事業の運営は極めて難しくなり、結局その事業は失敗する可能性が高まります。
●パトス論の意思決定基準
第2回目でお話しましたが、夢工学においてパトスは、情熱、熱狂、意志、意欲、ガッツなど夢実現への熱中で表現される精神活動を促す源泉力で、脳生理学の主として旧皮質の働きに由来するものです。大まかに「感性」の意味ですが、単なる精神論やガッツ論ではありません。パトス論は、夢を実現し成功させるプロジェクトの過程で「最も望ましいパトス(感性)の精神活動とそれに基く行動とは何か?」を説いたもので、「念」の理論、即ち「理念論」と言い換えてかまいません。そのパトス論は「夢存在論、変身論、創造開発論、エントロピー論、体得論、成功論、自己実現論」の7つの各論で構成されており、ひとつひとつに意思決定基準を持っています。
① 夢存在論の基準
この基準はベーシックな位置付けですが、当該プロジェクトの目的が「夢」の実現を目指しているか?です。言い換えればプロジェクト参画者全員が夢を共有し、夢実現に挑戦する気構えを持っているか?ということです。夢実現への挑戦が本当であれば成功の可能性が極めて高いので、意思決定者はYESの意思決定をすることとなります。
② 変身論の基準
この基準は、当該プロジェクトの内容が大胆な「変身」を目指すものになっているか?です。ビジネス環境は常に変化しており、過去の成功事例は通用しません。現状維持は最も危険な選択といわれていても、変身に挑戦する意思決定者が多くないことも現実です。ぜひ意思決定者にはYESの決定をしてもらいたいです。
③ 創造開発論の基準
この基準は、当該プロジェクトの内容が先例主義 固定観念 既成観念などに縛られず、全く斬新な「創造」を目指しているか?です。何度も先送りされた案件の上書きではなく、新しい時代に合致したプロジェクトを立ち上げ、実行する意思決定が必要です。
④ エントロピー論の基準
第2回目でお話した通り、全てのモノやコトは放っておくと常に、確実に、例外なく、無秩序に向かっていきます。これを夢工学では「エントロピー」増加といいます。この考えでは夢も、その実現と成功のための意思決定や行動(活動)も、創られた物も、全て無秩序になり消え去って行くということになります。この基準では、当該プロジェクトの内容が激変する世の中の潮流に遅れることなく、素早い判断と行動を目指しているか?です。何度も先送りされた案件などは無視して、新しい時代に合致したプロジェクトを素早く立ち上げて実行すべきです。
⑤ 体験論の基準
この基準は、当該プロジェクトの内容が形式知だけでなく、暗黙知の「現場体験」に基づいて作成されたか?です。現場体験を重視し過ぎると戦略の存在価値が無くなりますが、現場体験の無い意思決定は失敗を招きます。
⑥ 成功論の基準
この基準は、当該プロジェクトの内容が、「成功」の体験を持つ成功者の英知と実行動に基づいて作られたものか?です。成功体験は新たな成功を生みます。失敗そのものからは成功は生まれません。しかし成功者の驕りや油断から、環境の変化に気付かず失敗する落とし穴もあります。これを「成功の復讐」といいます。この復讐を受けない努力が更なる成功を生むことになります。
⑦ 自己実現論の基準
この基準は、当該プロジェクトの内容が、プロジェクト参画者の「自己実現」を目指して作られたものか?です。高度な自己実現を達成した者は、成功に溺れず、油断しないので「成功の復讐」に遭遇しません。成功させることを超えて、自己実現を願う最高意思決定者とそのプロジェクトチームは、最強、最速、最適、最高の組織です。たとえ失敗しても更なる挑戦をし続ける組織です。
ロゴス論に基づく意思決定論
ロゴス論は、人間の理性に訴えることを課題としています。従ってロゴス論が求めることを満たさない事業を実現することは極めて困難となります。仮に実現してもその事業の運営は極めて難しくなり、その事業は失敗します。
●ロゴス論の意思決定基準
第3回目でお話しましたが、ロゴス論は夢実現のために何を創造するか、夢と現実を繋ぐ虹の架け橋であるOSS=Operation(運営)、Stage(運営舞台)、 Structure(事業基盤)をいかに適時、適切に設計・計画(=VPM)するか、OSSをいかに建設=PM(Project Management)するか、完成したOSSをいかに運営=OM(Operation management)するかの技術です。ロゴス論に基く意思決定基準は、「計画設計内容の基準」と「計画設計の設計者に関する基準」の2つです。
① 計画設計内容の基準
この基準は、計画設計の内容が適時、適切に作成されたか?です。しかしながら、計画設計を適時、適切に実行することは極めて大変な知恵、労力、時間、金、情報などを必要とします。またそれは、当該プロジェクトの戦略適合性、事業採算性、安定性、発展性、社会的適合性、環境保護性などを満たさなければならないものです。意思決定者の力量が試されます。
② 計画設計者の基準
この基準は、適切な時期に、適切なプロジェクトのリーダーとメンバーが計画設計を行ったか?です。その計画者が適切であっても、設計が以前になされ陳腐化して適時性に欠けている場合はYESの意思決定をしてはいけません。適切な人物とは、VPM、PM、OMの3つのマネジメントに精通し、豊富な実務経験があるリアル・ドライバーの人物を指します。
意思決定における課題
私見と経験も混じりますが、計画を実行し、立証不可能な部分を抱えながらも失敗覚悟でYESの意思決定をする日本企業は過去に余り多くないと思います。日本の多くの経営者は、先進海外企業が成功させたOSS=ビジネスモデルを導入してカイゼンをしながら収益をあげてきました。その成功の結果として、「不安、不安全、失敗の可能性」のある意思決定を避けるようになり、「安心・安全、確実」なビジネスモデルを導入する意思決定を選ぶようになりました。
意思決定者は「新しい事業を進める」、「若手の創造力に期待する」、「事業投資のために社内ファンドを設立した」…などと方針宣言をします。いざ案件が上がってくると重箱の隅を楊枝でつつくようなリスクの洗い出しを指示して、現場は多大な時間と労力で疲弊します。意思決定の局面になると、意思決定者はその事業案の経験も知見も無いので財務的な視点だけを拠り所に「安心・安全、確実」なビジネスモデルだけにはGOを出します。そんなことが繰り返されると、起案側は承認を取り易くするためにマーケティングや財務計画のデータに化粧を施します。仮に事業がGOとなり事業を始めてみると化粧は剥がれ中止・撤退という結末が待っています。
「日本人はよく模倣する。それは創造性が不足しているからだ」という議論を聞きます。しかし私はそうは思いません。日本人の創造性を実現させる新事業を失敗覚悟でYESと意思決定を行う経営者はあまりにも少ないのが、日本人の創造性を実現させる多くの機会を失った要因と考えます。そして夢へのチャレンジの実績を積み上げることが出来ませんでした。この実績の積み上げが少ないが故に、企業は新事業の失敗を他の事業の成功によって補填する考え方を定着することが出来なかったのだと考えます。
私の経験ですが、新規事業投資の検討に当たって、意思決定者である経営者からは下図のような「キメ台詞」をたくさん浴びせられました。経営者のみなさんには「守りたいもの」「失いたくないもの」があることは分かりますが、ご自身が去った後の会社の将来にも責任があることは自覚してもらいたいと強く感じます。
プロジェクト・マネジメント(PM)とオペレーション・マネジメント(OM)
PMとOMについてはみなさま十分に経験と知識があるでしょうから、ここでは簡潔にお話をします。
●PMとは
プロジェクトとは、プロジェクトとは、①在来の機能的組織を横断(横串)する定例的、非反復的に形成された組織機能を持ち、②人的経営資源(経営者、プロジェクト・マネージャー、社員など)および非人的経営資源(資金、モノ、情報など)の活用統合を図り、③一定の期間(スケジュール)で一定の経済的制約(予算)のもとで行動し、④未来予測計画および実行計画を作成し、⑤夢(目的、課題)などを実現させる一連の行動のことをいいます。
プロジェクト・マネジメントとは、①特定の目的・使命を達成するため、②特定のプロジェクト・チームを編成し、③予め定めた期限内に、④人、モノ、金、情報などの有形・無形の資源を活用し、⑤目的的、機能的、合法的、効率的、効果的、専門的に、当該プロジェクトが目指す新しい価値(成果)の創造を行う一連の活動と、それを全体的、総合的、組織的にマネージする技術のことをいいます。
●夢工学のPM
夢工学は伝統的PMを発展させた工学です。特に前工程のVPMを発展させてVPM、PM、OMの3つのマネジメントを三者一体で推進させる工学を構築したものです。伝統的PMとの共通点を多く持ちますが、PMが十分にカバーしていないVPM段階の「計画設計」と「意思決定論」を充実させて、OSSの建設を最重視しています。また、OM段階に予測される問題をVPM段階とPM段階に濃厚に反映させ、VPMとPMとOMの三つの機能をフィード・フォワード(予測・順流思考)とフィード・バック(見直し・逆流思考)によって総合的・相互的・相補的に検討することを徹底させたことにあります。今風にいえば、フォアキャスティングとバックキャスティングの並行運用です。
●OMとは
人事・組織論、生産管理論、品質管理論、営業・販売管理論、市場論、コスト管理論&削減論、予算管理論、財務論、資金論、財産管理論、株式・社債論、福祉論、労働論、広報論、コミュニケーション論などを指します。事業の成功の鍵はOMにあります。夢工学は「夢を認識し、夢が実現され、日々運営されている状況を描く」ものです。この日々運営されている状況を描けるか否かが夢の実現を大きく左右します。もし日々の現場運営とOMに精通していない人物が計画設計を作れば、そのプロジェクトは失敗します。企業にとって経営や事業が日々、適時、適切に運営されて始めてはじめて「成功」といえるのです。
もしOMに精通し、コストダウン、改善、改良など、日々の事業運営の効率化に精通していれば、夢を実現できるかというと残念ながらNOです。夢を実現したければ、全く新しい観点からの創造活動によって既存事業を見直し、そして全く新しい新商品、新製品、新サービス、新事業を創出することです。多くの経営者や管理者は、事業の成功は経営戦略の巧拙と事業運営の巧拙と信じています。その「巧み」をもっと掘り下げる必要があります。繰り返しになりますが、夢が実現され、日々円滑に運営されている状況を具体的に描く」ことが出来れば、OSSの計画(VPM)、OSSの建設(PM)、OSSでの事業運営(OM)の三位一体のイメージを描けます。これが描けないと、その夢の実現は難しいものになりますし、3つのマネジメントが三位一体で融合し、それぞれの機能を最大に発揮させて初めて事業が成功するのです。
我々は日本の未来形成のために何をすべきか
私見ですが、今の日本には夢を持たない人、夢を捨てた人が多いように感じます。また「夢を持つ人」を青臭いと心底では蔑み、「夢実現に挑戦する人」を心底ではお手並み拝見と傍観する人が多いようにも思えます。「夢実現に失敗した人」を夢想家と蔑み、極めて冷淡に扱う風潮もあります。
このように、夢を持つことの重要性や有効性を本気と本音で信じ、夢実現に挑戦する人を本気で激励し、支援する日本のリーダーは多くありません。そのような「夢不毛」の危機から脱出し、明るい未来を形成する方策として様々なことが考えられます。そのひとつとして。「夢工学」を提唱し、その普及を通じて一人でも多くの人々が夢を実現させ、成功させることをお手伝いしたいと考えているのもそのためです。
経営には何よりも「夢」が必要です。単純明快に要点のみに絞ると、夢の経営とは以下ではないかと考えます。
①会社の夢は何かを具体的に明らかにする。
②その夢のどれか一つでも選択し、プロジェクトとして夢工学などの管理技術を適用して夢を実現させ、成功させる。
③その夢の実現と成功に関して何らかの人事評価基準を決める。
以上の考えで、夢のある商品、夢のある製品、夢のある技術、夢のあるサービス、夢のあるプロジェクト、そして夢のある事業を実現し、成功させることが「夢のある経営」の実現と成功になると思います。企業における夢の実現は、夢のある産業の形成に役立ち、夢のある産業は豊かな日本経済を生みます。豊かな日本経済は夢が持てる政治と行政を可能にして、夢のある日本を築くことを可能にできます。
いかがだったでしょうか。ご興味をお持ちいただける内容がございましたら、ぜひ私のホームページの「お問い合わせフォーム」からお気軽にご連絡くださいませ。いま私は夢工学発案者の川勝先生と共同経営顧問も行っています。川勝先生にも話を聞いてほしい、相談をしたいというご希望があれば、ぜひお問い合わせください。現在川勝先生と私で無料Zoom経営相談を実施しています。
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4回にわたる「夢工学」の連載にお付き合いをいただきましてありがとうございました。それでは、また別の機会にお会いできるのを楽しみにしております。
〔文責:有馬諄〕