あなたの会社の経営を変える「夢工学Ⓡ」のすすめ
〔第1回〕イントロダクション
~ 有馬諄様寄稿 ~

 こんにちは。エクス代表・抱が書くブログ「志士奮迅」です。
 年が明けたと思っていたら、もう如月で立春の声が聞こえてくる。加齢すると時間の速度が速く感じるというが、それを強く実感している。アインシュタインの相対性理論では、時間は単一ではなく、状況や環境に応じて変わると述べているが、まさに自分自身の時間の経過速度が年齢に相対して加速しているように感じる。新型コロナでじっとしていたら、気が付けば夏になっているかもしれない。

 平素は「志士奮迅」をご愛読頂き、ありがとうございます。
 現在は生産管理の歴史について書かせて頂いていますが、今回は識者の寄稿をお願い致しました。寄稿頂くのは、弊社のウェビナーにもご登壇頂いている有馬諄様です。有馬様はものづくりに通じ、製造業の改善・改革に深い造詣をお持ちのコンサルタントです。今回は「あなたの会社の経営を変える『夢工学🄬』のすすめ」をテーマに、全4回、論を展開して頂きます。皆様のものづくり経営にも役立つお話だと確信しておりますので、ぜひご一読下さい。

 それでは有馬様、宜しくお願い致します。


 はじめまして。オフィス有馬諄代表の有馬諄(ありましゅん)と申します。
 総合商社で36年間勤務し現在は経営コンサルタント、経営顧問として国内外の企業のご支援をしております。このたび株式会社エクス様のご厚意で、私の経営推進論の軸である「夢工学」についてご紹介をさせていただくことになりました。2月から隔月で計4回の連載をさせていただきます。みなさまのお役に立てられるよう執筆してまいりますので、お読みいただけましたら幸いです。
【オフィス有馬諄ホームページ】 https://office-arimasyun.com

夢工学との出会い

 私は経営コンサルタントや経営顧問として企業さまのご支援をさせていただく際に、夢工学の継承者としてその「在り方」と「やり方」を適用して、大きな効果とたくさんの感謝を企業さまや経営者さまからいただいています。

 夢工学は川勝良昭先生が発案されて1989年に体系化をされました。夢工学は夢を持っている人がいかに夢を実現するか、いかに成功させるかを説くものであり、夢を持っていない人がいかに夢を持つかを説くものです。世間では左脳と右脳の働きに注目した発想法が流布していますが、夢工学では「発想したい」、「夢を実現したい」という原動力を生む「前頭連合野」の働きに注目した発想法です。

 川勝先生は、新日鐡(現在の日本製鉄)で技術協力開発部長やテーマパーク開発部長を歴任された後、セガへ転職されてジョイポリス第1号店の開発事業を手掛けられました。その後、岐阜県理事や新潟県参与の官僚職の傍ら法政大学や亜細亜大学などで特任、客員教授を兼務されるなど、産官学の分野で活躍をされました。退官後は経営コンサルタントとしてこれまで1000社以上の支援・指導をされています。川勝先生は現在の日本人の多くが夢を持っていないこと、捨てているという夢の欠落が国、企業、個人の未来を奪ってしまうことを大変懸念されています。私自身も前職の会社で社員たちが夢を失っていることを目の当たりにしてきました。作ることが目的の魂がない中期計画、リスクを恐れ全戦全勝が前提の投資事業審査、過度なガバナンス、加えて邪な忖度が横行する企業環境では、社員たちは内向きになってしまい夢を持って語り合うことが少なくなっていました。私の部下たちが夢を持って活躍してもらえるように、守り中心の企業文化と戦いましたが力及びませんでした。多くの元部下たちが夢破れ会社を去ったことを私が退職した後に知って、どんな小さな夢でも実現をさせて成功をさせる達成感を得ること、そして次の夢を持たせるにはどうすれば良いか…と考えていた時に川勝先生と夢工学に出会ったのです。

 いま私は川勝先生と共同経営顧問も行っています。川勝先生にも話を聞いてほしい、相談をしたいというご希望があれば、ぜひオフィス有馬諄のホームページ「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。現在川勝先生と私で無料ZOOM経営相談を実施しています。


 

夢工学は自由発想

 夢工学では夢とは何か?と定義はしません。夢は自由に見るものですから、経営者や社員が「これが夢だ!」と言えばそれが夢なのです。特に会社の夢は経営理念の具現化、既存事業の改革や新規事業の達成などを成功させることでもあり、日々の事業経営と業務の遂行、各種プロジェクトの推進、システム開発などを成功させることまでも夢になるでしょう。夢工学における夢は押し付けや義務ではなく、当事者本人による自由設定であり自由発想な覚醒して見る「夢」です。夢を持つということには大切な意義があります。夢とは自分が大好きなこと、やりたいこと、成し遂げたいことです。この夢を持つことによって実現させ、成功させたいという強い情熱が心と体の中から自然に湧き起ってきます。叶えたい夢への情熱、好奇心、興味の程度が強いほど夢の実現と成功に近づきます。
 
 夢工学は、夢の存在こそが物事の「成功の根源&不可欠要因」に成るとする考え方を持ちます。夢を持つとそれを叶えたい強い「意志」「情熱」などが湧き起こります。その夢を叶える為に必死で考え「優れた発想(アイデア)」を生み出します。発想を実現させるために汗と涙と血を流すことを厭わず、喜んで流すほどの「優れた発汗(努力)」を行います。そして当然の結果として夢が叶います。多くの日本の企業人は、事業環境の現状の分析、現状の問題点などから出発し、解決すべき目標や達成させたいゴールを設定して挑戦をします。しかしその目標やゴールはほとんどの場合「実現可能なもの」に意識的または無意識的に設定をしています。この様な思考方法では、従来の延長線上の改善・改良、良くて改革のレベルの目標やゴールの達成しかできません。革新的・革命的なビジネス・イノベーションは生まれないのです。夢工学では改革レベルは勿論のこと、革新・革命的なイノベーションの夢の達成を目指すものです。

夢工学の構成

 夢工学は夢を達成(実現・成功)するための「在り方(基本的考え方)」と、「やり方(具体的方法論)」を説いた工学です。夢を持ち、それが実現し、成功している状況と効果を具体的に描き(仮説)、その実現に挑戦すれば夢は実現するという考え方の工学です。夢工学は6つの工程による「夢一貫達成全工程」を統括するTotal Project Engineering(総合プロジェクト工学)です。下記は新規事業の場合の例です。
 1. ストリーボードのように「夢」が実現して、成功している状況と効果を仮説する
 2. 仮説を基に「夢」の新規事業・基本設計書を作成する
 3. 設計書を具現可能にする事業と技術等を現実の世界で探索~評価~採用する
 4. 起用された基本設計書を基に新規事業を構築する
 5. 新規事業基盤を完成する。それは「夢の実現」
 6. 基盤で新規事業を運営して成功へ。それが「夢の成功」

 夢工学は情緒的な方法論ではありません。夢工学は「パトス論(理念論)」と「ロゴス論(技術論)」で構成されています。「仏作って魂入れず」のように苦労して成し遂げながら肝心な点が欠けないように、「仏(ロゴス論)作って魂(パトス論)を入れる」、言い換えれば理性と感性を同時・同質に発揮することを求める工学です。

 パトス論は、1+1=∞という「感性」の非合理性、感覚性、感情性などの働きをいかに最大化するかを説くものです。夢存在論、変身論、創造開発論などで構成されており、DXのトランスフォーメーションを成功させるために夢工学の変身論を活用すると効果があります。ロゴス論は、1+1=2という「理性」の合理性、納得性などの働きをいかに最大化するかを説くもので、プロジェクトマネジメント(以下PM)の基盤上に構築されます。PM が対象としない夢を起点とする「上流工程」=Vision & Planning Managementと、PMが完了し事業基盤完成後の事業運営を成功させる「下流工程」=Operation Managementをカバーしています。


夢工学の在り方<1>
「本物の夢」を持つ人は夢を叶える

 夢工学では「夢の発見」を原点とし「本物の夢」を持つ人こそが夢を叶えると考えます。「夢こそすべて」なのです。夢が叶うか否か?と考える前に、その夢が大好きなことであれば、その夢を実現させたい「情熱」を心に秘め言葉にします。この「情熱」が夢工学の本質の一つです。

 一方で夢に悩み夢を叶えられない下記の人も「本物の夢」を持つ人です。
 ・自分の夢を会社の夢に重ね合わせて頑張る人
 ・社内の新規事業や難易度の高い仕事にも手を上げて参画したいと手を上げる人
 ・新しい経営や業務を自発的・自主的に企画し提案する人
 ・「本心、本気、本音」で仕事に取り組んできたが成果(結果)を出せず悩む人
 ・成果を出しても報われず悩み、それでも成果を出そうとする人
 ・自分の個性、才能、ギフト(天与)が分からず悩むが、それでも頑張る人
 ・成果を出したいと強く思い過ぎるため、本番になると緊張し過ぎて普段の実力を発揮できなくて悩む人

夢工学の在り方<2>
夢を持つ人物は「優れた発想」と「優れた発汗」 を生む

 世の中の多くの発想法は、発想したい動機を軽視しています。しかも発想理論モデルの裏付けが不十分な「単なる技法的発想法」が目立ちます。夢工学は夢を持ち「発想(思考)」するだけでは十分とは考えていません。発想したことを実現し成功させる「優れた発汗(行動)」を求めます。この行動を支援する工学がPMを基盤とした夢工学です。夢を持つ人物は「優れた発想」を生み出すだけでなく、その発想を実現させる「優れた発汗(行動)」をします。これこそが人間の本性なのです。究極の動機となる本物の夢を持った人が「創造パワー」を全開し、「優れた発想」を持続的・挑戦的に発揮し、汗と涙と血を流すことを厭わず喜んで流す「優れた発汗」をやり続けます。創造の「創」は「発想」を、「造」は「発汗」を意味すると夢工学では定義します。創造こそ夢の実現と成功のための「最強の方策」であるといえます。

夢工学の在り方<3>
理性+感性+人間性の3点からの発想と発汗は夢の成功に繋がる

 企業では理解し易い1+1=2の理性的判断を優先する人、または凝り固まった左脳思考オンリーの人がいます。その逆で1+1=∞の感性的判断を優先する人、または凝り固まった右脳思考オンリーの人もいます。夢工学では徹底した理性的発想(左脳発想)をする一方、徹底した感性的発想(右脳発想)もします。さらに両者を飲み込む人間的発想(大脳前頭連合野発想)をします。加えて直観を信じて実践することを薦めます。直感は理性的にも感性的にも人間的にも悩みに悩んだ末、検討に検討を重ねた末に突如先方の方からこちらにやって来るものです。理性(理論・理屈・計算)の観点だけの発想と発汗は重大な「失敗」に繋がります。理性に感性(感情・想い・気持ち)と人間性(真善美)を加えた3つの観点からの発想と発汗こそ「成功」に繋がるのです。

夢工学の在り方<4>
夢を起爆剤に完全自由発想をする

 人間の本性として人は誰でも「自由」に夢を描きます。人類も「自由」に描いた夢を「自由な発想」を基に数々の偉業を達成してきました。夢工学はその本性と偉業を見習い「夢工学式発想法」として夢を起爆剤とする「完全自由発想」を基盤としています。世間で自由発想と言われるブレーンストーミングには、自己批判禁止、他者批判禁止、ヒッチハイク奨励(他者アイデアを盗んで応用発想)、量を出せ、記録しろなどの「ルール」を持ちます。夢工学では「ルール」は一切ありません。何でもありの徹底した「完全自由発想」です。自己批判自由、自ら発想した内容を自ら評価し、批判することや他者の出した発想の内容を批判してもよい。批判は時に発想の質を高めます。発想内容を再吟味する機会を与えてくれるので他者から評価され批判されることも重要です。自由奔放、自由飛躍、自由深化などあらゆる方向で「自由発想」をすれば「優れた発想」があなたに向かってやって来るのです。

夢工学の在り方<5>
夢を叶える第一歩は未来を先に具体的に設定する

 夢の第一歩は未来の夢の「成功仮説」と「効果仮説」を描くことです。夢が実現し成功した「状況」と「効果」を文字、絵、図、チャートなどで可能な限り具体的に複数描くことが大切です。未来を先に具体的に設定した「未来設定ファースト」で描き、これを実現する手段を現実に見て探して記述するのです。いまでこそバックキャスト戦略的思考という言葉でビジネス界に浸透してきましたが、川勝先生は30年ほど前からすでに未来設定を定義して夢工学で提唱されていました。この様な作業は携わっているメンバーが「知的興奮」を覚え、「夢の実像イメージ」が共有され共感されるまで作業を続けます。発想の内容を描き、次ぎ次ぎと発想と描写を繰り返し、最後に絵や文章で具現化された夢を「取らぬ狸の皮算用」で纏めること。この仮説設定作業こそが「発想作業」そのものです。

夢工学の在り方<6>
発想促進法と発想阻害排除法

 夢工学は、いまここで(Now & Here)、誰でも、何にでも(Anyone & Everything)、簡単に、明瞭に(Simply & Clearly)、使いたい様に使えば良い(As you like)、という発想法です。夢工学の基本は「自由発想」であり、世の多くの発想法が求めるような複雑・難解で習得が難しい発想のテクニック、ルール、マニュアル、手順などを一切求めません。なぜならテクニック、ルールなどに気を取られ、発想に集中できないからです。またルールに従えば「優れた発想」が必ず生まれるという過大な期待が生まれることもあります。これでは本末転倒になってしまいます。夢工学は「在り方」を最重視するので、これを先ず学び、心身に植え付け、その上で「やり方」を活用することを発想する人に求めます。

 発想し易くする方法で発想することが重要です。夢工学では発想を促進させる事物(コトやモノ)が何かを理解して、その事物を活用して「優れた発想」をする発想促進法を持っています。もし優れた発想思考が生み出されると、それを具現化・実現させたい意欲が行動に現れ「優れた発汗行動」をします。発想促進法は、「優れた発汗行動」を生み出し、さらに促進させ、強化する効果も持ちます。発想促進法を駆使して「優れた発想(思考)」と「優れた発汗(行動)」をする事によって夢は達成(実現&成功)されます。他方で発想を妨げる要因を排除して、発想し易くする方法で発想することも重要です。発想を「阻害」させる事物(コトとモノ)が何かを理解し、その事物を排除して「優れた発想」を生み出す方法が発想阻害排除法です。

 いかがだったでしょうか。ご興味をお持ちいただける内容がございましたら、ぜひ下記ホームページの「お問い合わせフォーム」からお気軽にご連絡くださいませ。
【お問い合わせページ】 https://office-arimasyun.com/5

 次回は夢工学のパトス論(理念論)についてご紹介をさせていただきます。それでは、また次回の連載記事にてお会いできるのを楽しみにしております。

〔文責:有馬諄〕